夢健究会
東洋医学では身体の状態を診るために「四診」があります。四診とは、顔色、表情、舌の様子から健康状態を診る(望診)、声の大きさや話し方、痰のつまり方などを診る(聞診)、自覚症状や過去にかかったことのある病気について質問する(問診)、身体に触れてその状態を診る(切診)があります。現代医学のように血液検査やMRI、CTスキャンなど医療技術がなかった昔、舌は「気・血・水」や「虚・実」の異常と結びつけて漢方処方を行ってきました。
舌には水分過多やストレスなど身体のさまざまな不調や症状となって現れるため、病気の早期発見や健康管理のためにも毎日、観察してご自分の舌の状態を知っておくことが大切です。
Contents
1.咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんげ)機能
咀嚼とは、食べ物を「噛む」動作のことです。食べ物を口に入れるとまず、前歯で噛み切り、舌で受け取ります。その後、食べ物を奥歯の上に運びます。奥歯で噛み始めると、食べ物が落ちていかないように舌全体で支えます。
嚥下とは、食べ物を取り込み、飲み込む動作のことです。咀嚼され、食べ物が飲み込める形になると、舌先が上あごの天井に接するようにして喉に送り込みます。また、奥歯で効率的に噛むために、歯と歯の間に食べ物を運んで、何度も噛むことにより、唾液が分泌されます。食べ物と唾液を混ぜ合わせできるのも舌の役割です。
2.構音機能
構音機能とは「話す」ことです。言葉を話すためには、まず脳から指令を送ります。音を作り出す器官はその指令を受けると、肺から息を出し、喉仏にある声帯を震わせて音を作ります。最後に舌の形を変えたり、口を動かしたりしいて、微調整することで思い通りの声を作ります。舌の動きにより、話したり、歌ったり、異なった音を出すことも可能です。
3.味覚機能
人が感じる味覚は、舌に存在する味蕾(みらい)という味細胞が集まった器官で味を感じ取り、神経細胞を介して脳に伝達されています。脳が甘味、苦味、塩味、酸味、うま味などの味を感知しています。甘味は舌先で、塩味は舌先の外側、酸味は舌の奥の方の外側、苦味は舌根との境目あたりで感じ取られます。
4.歯並びの形成
歯並びを形成する上でも舌の役割は重要です。舌が歯に触れていたり、逆に触れていない場合は正しい状態ではありません。舌の先端だけが上あごについているのも正しい状態ではありません。舌の正しい状態は上あごの裏にあるスポットに舌の先端がつき、舌全体が上あごについている状態です。正しい位置に舌があるだけで歯並びだけでなく、身体にも良い影響があります。鼻呼吸をしやすくなりますので、呼吸と共に空気中に存在するウイルスや細菌を体内に取り込みにくくなり、感染予防にも繋がります。
「理想的な舌」
舌全体がきれいなピンク色をしていて、割れ目やブツブツがなく、全体にうっすらと白い舌苔(ぜったい)がある状態です。
「気虚タイプ」
ぼってりと厚い舌や舌が大きいために両側に歯型のつく舌は、疲れて新陳代謝が低下し、水分代謝も悪くなってむくんだ状態です。
「陽虚タイプ」
気虚タイプがすすんで身体が冷えているとき、血液の巡りが悪くなり、白っぽくなります。陽虚タイプは身体を温める力が弱い体質です。
「淡湿タイプ」
白い舌苔がべったりとくっついている場合、身体の中に水分が過剰で、むくみや冷えを起こしています。気虚や陽虚の人にも起こりやすいと言われています。
「湿熱タイプ」
舌苔が黄色く、べったり付いている場合は、お酒や辛い食べ物、高カロリーな食べ物を摂り過ぎて身体に熱がこもっている状態です。
「血虚タイプ」
舌の色がピンク色よりも淡くなるのは血液が不足しているからです。貧血の傾向にあります。
「陰虚タイプ」
舌全体の赤味が強く、舌が少ない又は無い状態や亀裂がある場合は、水分を保持する力が不足し、身体が熱を持った状態です。また、舌全体が細かく痩せてしまっている場合も水分の保持力が不足しています。
「於血タイプ」
紫色の舌は、血液の巡りが良くないことを表しています。その状態が続くと、舌のシミのような斑点(お斑)ができる場合があります。また、舌裏の静脈が大きく膨張して黒くなっている場合も血流が悪い証拠です。
舌のセルフチェックしましょう
□舌を磨いている
□舌に汚れがついていない
□舌の色がピンク色になっている
□舌を唇の前に出せる
□舌を左右に動かせる
□舌を上あごにつけられる
舌をきれいにすることで、
・口臭が減る
・風邪の予防
・食べ物の飲み込みが良くなります。
□身体を冷やさない、温めすぎにも注意
身体が冷えて血流が悪いと、舌は紫色っぽくなってきます。逆に体内に過剰な熱がこもり、水分が足りていないと赤い舌になります。また、舌苔は身体が冷えている状態では白くてやや厚みを帯びてきますが、過食などで熱や湿気が停滞している時は黄色っぽい舌苔になりますので注意しましょう。
□栄養バランスのある食事を摂る
栄養バランスが悪かったり、ビタミンやたんぱく質が不足していると、舌苔に変化が表れます。特に胃が弱っていると舌苔が剥がれ落ちてしまいます。また、舌苔がない、ツルツルした場合は、栄養が足りないだけでなく、胃腸機能や免疫機能が低下している可能性があるので気をつけましょう。
□極力ストレスを溜めないことが大切
過度なストレスが続くと肝臓に負担がかかり、舌の側面が赤くなったり斑点ができる場合があります。また、睡眠不足や過労により心臓に負担がかかり、舌の先が赤くなることもあります。睡眠不足や不規則な生活にならないように気をつけましょう。対策として、39℃前後のぬるめのお湯に浸かることで心身の疲労が回復します。
舌は食べる、味わう、話す、歌うなどの人が幸せを感じるために欠かせない器官です。また、舌の色や形状が健康状態や病気を現すサインでもあり、病の早期発見に繋がる場合があります。朝起きた時、歯を磨く時などご自身の舌のチェックを行い、清潔で健康な舌を目指しましょう。
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