夢健究会
季節の変わり目、花粉、大掛かりな掃除をしたとき…人によっては想像するだけで鼻がムズムズするのではないでしょうか。くしゃみに鼻水と、ハンカチやティッシュにと忙しく手を動かさざるをえないと思われます。
そもそも、「鼻水ってなんのためにあるの?」と考えたことはありませんか。今回は、全人類が一度は悩まされているであろう「鼻水」の役割を追求していきます。
まず鼻の役割について解説していきます。
鼻にはにおいを感じる働き、体内に酸素を取り込むために呼吸する働きがあります。
そして、体内に酸素を取り込むと同時に、空気中に散りばめられているウィルスやごみなどが体内に入らないようフィルターの役割も担っています。
さらには、体内に入ってくる空気の温度・湿度の調整もしてくれているので、まさにからだを外敵から守ってくれる守衛のような働きをしてくれています。加湿器やエアコンのような働きをしてくれていると思ってくれていいでしょう。その結果、肺に負担がかからないようにしてくれています。
しかし、なんらかの原因で鼻腔内の粘膜が腫れると「鼻炎」と呼ばれる鼻の通りが悪くなるほか、くしゃみや鼻水が出やすくなる疾患に陥ります。
このように、鼻は呼吸をして酸素を取り込む生き物にとって非常に重要な役割を担ってあるものの、ものすごくナイーブな箇所であるということを覚えておいてください。
ではここからは「鼻水」自体の解説をしていきます。
結論からお伝えしますと、鼻水は「鼻の中の洗浄液」なのです。
鼻水は、鼻粘膜から分泌された水分や粘液、血管から外部に漏れ出た水分などから作られています。
作られた鼻水の役割は、鼻に入る空気の加湿・加温や、ごみや異物を排除するのに使われています。
通常時の鼻は常に粘液や水分、抗体などを分泌することで表面をカバーし、細菌やほこり、花粉やウィルスなどの侵入を防いでくれています。そして肺に綺麗な空気が送られるというわけなのです。
更に詳しく説明すると、鼻腔内では、入ってくる空気を加湿させたり、粘膜を保護させたりするため、鼻粘膜から常に少量の粘液が分泌されています。
この鼻粘膜にウィルスや花粉などの異物が付着すると、粘膜表面にある「繊毛(せんもう)」と呼ばれる細かい突起があるものが動きます。ベルトコンベアーのように粘液とともに異物を鼻腔の奥に運んでいきます。
運ばれた異物は、喉から「たん」として出されたり、本人が気付かないうちに胃の中へ取り込まれたりし、取り除かれます。こうして鼻は常に綺麗な状態で保たれ、肺に空気を送ってくれるというわけなのです。
ウィルスなど病原体が鼻腔や喉粘膜に付着すると、ウィルスと戦うために免疫細胞が活性化し、その結果「サイトカイン」と呼ばれる物質を放出します。サイトカインは炎症物質なので鼻の粘膜で炎症を起こします。
そして鼻腔内に炎症が起きると、脳から鼻水の分泌量を増やすよう指令が下り、普段よりも鼻腺から水分が分泌される、または血管から漏れ出る水分が増える、といったことから鼻水の量が通常時よりも増えてしまうのです。
他にもくしゃみ、鼻づまり、といった症状に繋がるのです。
このように、風邪のときに鼻水の量が増えるのは大変煩わしいものですが、「生体防御反応」であるため、からだを守るための必要な働きなのです。
アレルギー(花粉・ほこりなど)
なんらかの物質をからだが異物と認める(勘違いする)と、防御機構が働き抗体を作ります。
そして再びその異物が侵入すると、アレルギー反応を起こしくしゃみや鼻づまり、そして鼻水などの症状があらわれます。
花粉の時期ではなく通年鼻水やくしゃみなどに悩まされている方は、
・ダニ(死がいやフン)
・ゴキブリ
・蛾
・ほこり
・犬猫などの動物の毛
・フケ
などがアレルギーの原因物質となっている可能性が高いです。これらによって悩まされている方は「通年性アレルギー性鼻炎」と呼ばれます。
花粉の時期にだけ症状があらわれる方は「季節性アレルギー性鼻炎」=「花粉症」となります。
血管運動性鼻炎
くしゃみや鼻水、鼻づまりなどの症状があってもアレルギー性鼻炎の検査をするとすべて陰性と出る「血管運動性鼻炎」と呼ばれるものがあります。
「寒暖差アレルギー」とも呼ばれ、季節の変わり目や暑いところから寒いところに移動した際にくしゃみや鼻水、鼻づまりに襲われます。
原因がまだまだ解明されていない症状なのですが、寒暖差により自律神経のバランスが崩れ、交感神経が弱くなって起こると考えられています。
他にも排気ガスやタバコの煙、ストレス、香料の刺激なども原因ではないかと研究されています。
その他
鼻風邪やアレルギー性鼻炎による鼻水はその大体が両側から垂れてきますが、片側からしか出ない場合の原因としては、「上顎がん」があげられます。上顎がんは長年重症の慢性副鼻腔炎から発症することが多いと考えられており、進行していくと鼻づまり、鼻血、悪臭のある鼻水、歯痛、ほほの腫れ、視覚障害などの症状があらわれます。
また、小児の場合では鼻の中に異物が混入するとこのようになります。
ボタン電池や小石、紙、豆などが鼻に入ると気道を塞いでしまい、感染症から鼻水や鼻血へと繋がっていくのです。
風邪のときに鼻づまりが起きる理由は二つあります。
一つは、風邪のときにウィルス感染などによって鼻粘膜に炎症が起きると、鼻粘膜に通っている細い血管に作用し鼻水の量が増えます。先ほどの説明の通りですね。そして、鼻粘膜の血管を拡張するため鼻粘膜が腫れて狭くなってしまい、その結果鼻づまりが起きるというわけです。
もう一つの理由として、鼻の「甲介(こうかい)」と呼ばれる部分が腫れて鼻づまりが起こります。
甲介とはひだ状のもので、鼻の中に数多く存在します。甲介には伸び縮みして入ってくる空気を加湿・加温する働きがあるのですが、この甲介自体がウィルスなどに感染し炎症が起きると、腫れて空気が通りにくくなり、鼻づまりを誘発するのです。
ここからは、鼻水の色や状態を見極めていきます。
・サラサラで水っぽく透明
鼻過敏症による鼻水がこちらに該当します。鼻過敏症は、アレルギー性鼻炎、好酸球増多性鼻炎、血管運動性鼻炎などが含まれる総称です。
・ネバネバで透明または少し白っぽい
風邪などによるウィルス性の炎症が起こっている場合に、このような状態になるようです。ここからネバネバと粘り気のある鼻水へと変化することもあります。
・ネバネバで黄色または緑色
「副鼻腔炎」のときにこの状態になります。鼻内や副鼻腔にウィルスによる炎症が起こっていることが原因のようです。
副鼻腔炎(蓄膿症)の種類
鼻水が黄(緑)色っぽい以外に症状がなければ、鼻炎または副鼻腔炎であるといっていいでしょう。
副鼻腔炎(蓄膿症)とは、鼻腔周囲にある大小の空洞(副鼻腔)に、風邪などが原因で炎症が起こり、膿がたまってしまう疾患です。
ちなみに、風邪の治りかけのときの黄色鼻水に関しては心配ございません。
・急性副鼻腔炎
風邪または喘息などの最近による感染が原因で起こり、通常1~2週間で治ります。
・慢性副鼻腔炎
上記の急性副鼻腔炎を繰り返すもしくは長引くことで慢性化したものです。
副鼻腔炎(蓄膿症)の症状
・ネバネバで黄(緑)色の鼻水が出る
・鼻づまりが起きる
・炎症による頭痛を伴う
・目の周りが痛む
・歯の痛みや違和感(膿が歯の神経まで広がる)
・たんが出る(後鼻漏)
後鼻漏とは、異常な量の鼻水が喉の奥へ流れ落ちてくる症状をいいます。
鼻をかんでも鼻から鼻水が出ず、絶えず喉に流れ込んでしまい、その鼻水を口から吐き出すか、飲み込んでしまうしかありません。
花粉症や鼻炎を放置すると後鼻漏に繋がる恐れがありますので、注意してください。
鼻をかみ続けるほど、鼻の周りが荒れるたり赤くなったりするものです。
また、集中力も削がれ、生活に大きく支障が出ることでしょう。
・鼻やからだを温める
蒸しタオルを鼻にあてる、温かいお湯の入ったマグカップの蒸気を吸い込むなどをすることにより、鼻周辺の血流が良くなり、鼻水の症状が和らぎます。からだ全体を温めるのも同様の効果を見込めます。
湯船にしっかり浸かることで、全身を温め、上記による血流促進にも繋がります。
・部屋の湿度を上げる
乾燥は、鼻の粘膜を刺激します。
部屋の湿度を50~60%に保ち、またお湯を沸かす、濡れタオルを干すなどして乾燥を防ぎましょう。
・薬または漢方薬を使う
抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤は鼻づまりに適しています。しかし、毎日の常用は他の疾患を招く、もしくは効きも悪くなるので注意が必要です。自身の判断ではなく、医師やドラッグストアの販売員の方に聞きましょう。
漢方の場合、それぞれの状態によって使い方が違います。
一般的に「小青竜湯」なんかがよく使われますが、この漢方はからだの表面(体表)が冷えている方に使うものなので、鼻の周りに熱がこもっている方が使うものではありません。
漢方はドラッグストアにもたくさん並んでいるので皆さまの身近にありますが、使い方を間違えるとただの安物買いの銭失いです。西洋薬を医師や薬剤師に聞くのと同様に、漢方はその道のプロに聞くのが圧倒的によいのです。
子供向けの店舗で売っている鼻水吸引機は便利です。特に乳児の風邪の原因は鼻水とたんによるものが多いです。
鼻水吸引機を使用することで、風邪の頻度も減り、薬に頼る機会も少なくなったという意見もよく聞きます。
まだまだ小さいうちの子供は自分で鼻水をかめないので、ぜひ使ってあげましょう。
鼻水は子供から大人まで悩ませる一見重くない症状だと思いきや、放置することでさまざまな疾患に繋がりうることがわかりました。
この記事を書いている1月の半ばくらいから花粉も出てきて、人によってはこれから春先まで辛い日常を過ごすかもしれませんが、今回の記事で少しでも自分に合った緩和法を見つけてくだされば幸いです。
SEARCH
CATEGORY
GROUP
よく読まれている記事
KEYWORD