慢性炎症が老化を引き起こす?

慢性炎症が老化を引き起こす?

「年を取ると不調が増える」「生活習慣病が重なってくる」
多くの人が実感しているこの現象の裏側で、近年とくに注目されているのが慢性炎症という考え方です。

炎症というと、ケガをしたときの腫れや痛みを思い浮かべがちですが、実はそれとは全く性質の違う“気づかない炎症”が、年単位で体の中に居座ることがあります。
この低レベルで持続する炎症こそが、老化や生活習慣病、さらにはがんにまで関わっている可能性が分かってきました。

この「加齢と炎症が絡み合う状態」は
inflammaging「インフラメイジング」(炎症老化)
と呼ばれ、世界的にも研究が進んでいます。

今回は、

なぜ年を取ると炎症が増えやすいのか

慢性炎症がどのように病気や老化を進めるのか

を、できるだけ分かりやすく整理してみます。

「炎症=悪者」ではない? 急性炎症と慢性炎症の決定的な違い

まず押さえておきたいのは、炎症そのものは本来、体を守る仕組みだという点です。

風邪をひいたとき、ケガをしたときに起こる炎症は「急性炎症」と呼ばれ、

異物を排除する

傷ついた組織を修復する

という、非常に合理的な防御反応です。
問題は、終わるはずの炎症が終わらない場合です。

生活習慣病や加齢で問題になるのは、

痛みや熱感はほぼない

自覚症状も乏しい

それでも体内では炎症がくすぶり続けている

という慢性炎症

この慢性炎症では、免疫細胞(特にマクロファージやリンパ球)が長期間組織に居座り、

細胞を少しずつ傷つけ

修復と破壊を同時に繰り返し

組織の構造そのものを変えてしまう

という事態が起こります。

これが、動脈硬化、糖尿病、慢性腎臓病などに共通する「静かな進行」の正体です。

血管も脂肪も「炎症の現場」になる ― 生活習慣病の裏側

慢性炎症が最も分かりやすく表れる例が、動脈硬化と内臓脂肪です。

動脈硬化の場合

昔は「脂がたまる病気」と考えられていましたが、今では
血管の慢性炎症
と理解されています。

血管の内側で炎症が続くと、

マクロファージが集まり

酸化LDLを取り込んで泡沫化

死細胞が処理しきれずに蓄積

結果として、血管壁は硬く、もろくなっていきます。

内臓脂肪の場合

肥満になると、内臓脂肪は単なるエネルギー貯蔵庫ではなくなります。

脂肪細胞が肥大

免疫細胞が浸潤

炎症性サイトカインが放出

この炎症は血流に乗り、

インスリン抵抗性

動脈硬化

膵臓β細胞の障害

と、全身に波及します。

つまり、脂肪の炎症が全身の老化スイッチを押しているとも言えるのです。

なぜ年を取ると炎症が止まらなくなるのか ― 免疫老化という視点

高齢になると炎症が起きやすく、治まりにくくなります。
その大きな理由が免疫老化です。

免疫老化とは、

免疫の精度が落ちる

必要な反応が弱くなる

不要な炎症が消えにくくなる

というアンバランスな状態。

特に重要なのが、マクロファージの変化です。

マクロファージは本来、

炎症を起こす

炎症を終わらせる

両方の役割を持っています。

しかし加齢により、

炎症を促進するタイプが増え

死んだ細胞を片付ける能力が低下

すると、
「炎症を起こす → 片付けられない → さらに炎症」
という悪循環に入ります。

これが、高齢者で慢性炎症が常態化しやすい理由の一つです。

老化細胞が炎症をまき散らす? SASPという新しい考え方

近年注目されているのが、老化細胞そのものが炎症を生むという考え方です。

老化した細胞は、
SASP(老化関連分泌表現型)
と呼ばれる物質群を放出します。

これには、

炎症性サイトカイン

ケモカイン

組織を分解する酵素

などが含まれます。

本来この仕組みは、

不要な細胞を免疫に知らせ

組織を再構築する

ためのものですが、
老化細胞が増えすぎると、慢性的な炎症源になります。

実際、老化細胞を除去すると、

炎症マーカーが低下

筋力や組織機能が改善

することが動物実験で示されています。

「老化=細胞が静かに弱る」ではなく、
老化細胞が周囲を巻き込んで炎症を広げる
という見方は、老化理解を大きく変えつつあります。

まとめ

「年のせい」で片付けないために 

慢性炎症は、

・生活習慣病

・老化

・がん

・臓器機能低下

をつなぐ共通の基盤病態です。

そしてその背景には、

・免疫老化

・死細胞処理の低下

・老化細胞の蓄積

・代謝・内分泌バランスの変化

といった、複数の要因が複雑に絡み合っています。

重要なのは、
慢性炎症は突然起きるものではなく、長年の積み重ねで形成される
という点です。

だからこそ、

・体重

・食事

・睡眠

・ストレス

・加齢に伴う体の変化

を「年だから仕方ない」で済ませず、
体内で何が起きているのかという視点を持つことが、これからの健康管理では重要になります。

慢性炎症をどう抑え、どう付き合うか。
それは、単なる病気対策ではなく、
これからの老化との向き合い方そのものなのかもしれません。

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