夢健究会
みなさん、間質性肺炎という病気をご存じでしょうか?
最近では、上岡龍太郎さんや八代亜紀さん、枝元なほみさんなどの有名人が間質性肺炎と診断され亡くなっています。
近年増え続けている間質性肺炎、いったいどのような病気なのか?
Contents
まず始めに、「肺炎」と「間質性肺炎」は異なる病気です。通常「肺炎」とは、細菌やウイルスに感染して肺の中に炎症をおこす病気で、もっとも多い症状は発熱です。また、間質性肺炎とは、これに含まれる一連の病気のグループの総称であり、間質性肺炎のグループの中には、難病も含まれており、正確な診断とその診断に基づく治療が必要です。医療機関を受診される患者さんは10万人あたり10~20人といわれていますが、早期病変の患者さんはその10倍以上はいる可能性があり、およそ500~1000人に1人くらいの人がかかるのではと考えられます。知名度は低いですが、あまり稀な病気ではありません。
【仕組み】
肺は鼻や口から吸った空気の中に含まれる酸素を血液へと取り込み、不要となった二酸化炭素を体の外に出す働きをする臓器です。吸った空気は、肺の一番奥にある「肺胞」という場所に運ばれ、肺胞を取り囲むように流れる毛細血管との間で酸素・二酸化炭素のやり取り(ガス交換)をしています。一般的に肺炎と言うと「細菌性肺炎」のことを指します。口や鼻から入った細菌が気管支や肺胞の中で増殖すると、それに対抗するため自分自身の免疫細胞が攻撃します。その攻撃の影響は侵入した細菌だけではなく、周囲の正常な組織にも及びます。これを「炎症」と呼びます。「細菌」による「肺」における「炎症」、これが「細菌性肺炎」です。
一方で、「間質性肺炎」は肺の「間質」で起こる「炎症」を指します。「間質」とはいったいどこなのか、なかなかイメージがわきにくいと思います。広い意味で「間質」とは、肺胞や気道(空気の通り道)以外の肺の組織全体を指します。つまり「間質性肺炎」は特定ひとつの病気を指すものではなく、肺で起きるさまざまな炎症性疾患を幅広く指すものなのです。間質性肺炎はその原因や病気の性質によって何十種類に細かく分類されていますが、多くは間質に炎症をおこすことで、肺胞と毛細血管の間の壁(肺胞壁)が厚く硬くなり、ガス交換ができにくくなってしまいます。
1.異物の吸入によるもの
たばこの煙、カビ、ペットの毛、羽毛布団、粉塵・アスベストなどの吸入物質に長期間さらされていると徐々に肺の線 維化が起こりえます。
2.自身の免疫細胞の異常によるもの(自己免疫性)
関節リウマチや多発筋炎・皮膚筋炎、シェーグレン症候群、強皮症、血管炎などの自己免疫疾患、肺サルコイドーシス、IgG関連疾患など
3.医療行為による副作用・合併症(医原性)
病院で処方される薬剤(特に抗がん剤、抗菌薬、抗不整脈薬など)の他に市販薬、漢方薬でも起こり得ます。サプリメントや健康食品の長期摂取
によって発症したケースもあります。また、高濃度の酸素投与や放射線治療によっても間質性肺炎を引き起こすことが知られています。
4.感染症一部の特殊な感染症
(マイコプラズマ・サイトメガロウイルスなど)でも間質性肺炎のパターンを呈することがあります。流行中の新型コロナウイルス(COVID-19)
感染症でも間質性肺炎のパターンをとることが多いです。
5.その他
原因を特定できない間質性肺炎として、特発性間質性肺炎、肺サルコイドーシスなどがあります。
原因をつきとめることは間質性肺炎の診療においてとても重要です。原因によって治療が大きく異なるからです。例えば、薬が原因の間質性肺炎であれば、原因となっている薬をやめることが治療になります。かびが原因であればマスクを着用したり部屋の掃除をしたりすることが治療になるからです。原因を調べるために、詳しい問診と血液検査によるスクリーニング検査(拾い上げるという意味)を行います。
間質性肺炎の特徴的な症状としては、労作時呼吸困難(歩行など日常動作での息苦しさ)と乾性咳嗽(痰を伴わない咳)になります。原因が特定できない「特発性間質性肺炎」の場合、初期には症状はありませんが、症状は長年かけて出現・次第に進行していきます。しかしながら、病状の進行の程度は人それぞれであり、進行がほとんどみられない方もいます。
間質性肺炎はひとつの病気ではないことはすでに説明しました。間質性肺炎のなかでどのタイプの間質性肺炎なのかによってとるべき治療方針が変わってきます。したがってある程度の詳しい検査を行うことが治療方針を決める上で大切になります。
一部の感染症や薬剤が原因の間質性肺炎を除き、ほとんどの間質性肺炎は現在の医学では治癒できません。「治癒」とはそれ以上治療を行わなくても、完全に治ることを意味します。つまり、少なからず病気と付き合っていく必要があるのです。ただ、治癒はできなくても、薬によって健康な方の肺に近い肺の状態を保つ(寛解)ことができる方もいます。一方で、最善の治療を行っても徐々に進行してきてしまう方もいます。まずは自分の病気のことをしっかりと知ることが大切です。
薬による治療ももちろん大切なのですが、それ以上に日常生活の管理も大切です。具体的には、「禁煙」「風邪の予防」「栄養管理」「運動」などが挙げられます。
1.禁煙
肺の病気がある方にとって喫煙は百害あって一利なしです。受動喫煙も悪化させてしまう原因となるので身近な人に喫煙している方がいれば協力をお願いしてください。禁煙したいのにどうしても禁煙ができない方は、たばこの煙に含まれるニコチンの依存症になっている可能性があります。禁煙外来では、ニコチンを薬として補充することで禁煙時に起きる禁断症状を抑え禁煙のサポートが行えます。一定の条件を満たせば健康保険を使って治療ができます。
2.風邪の予防
マスクの着用や手洗い・アルコールによる手指消毒は感染予防に有用です。その他に、インフルエンザや肺炎球菌はワクチンにより予防が可能ですので接種をお勧めします。通常インフルエンザワクチンは毎年、肺炎球菌ワクチンは5年ごとの接種となります。年齢やお住いの所在地によっては自治体からの補助が得られることがありますので、お住まいの区市町村に問い合わせてみてください。
3.栄養管理
太りすぎてもやせすぎてもよくはありません。わたしたちの呼吸には腹式呼吸と胸式呼吸がありますが、腹式呼吸とは主に横隔膜の運動によって行う呼吸、胸式呼吸とは肋骨や胸周囲の呼吸筋を外側に膨らませることで行う呼吸です。太る、つまりお腹の脂肪が増えてしまうとお腹の脂肪によって横隔膜の運動が制限されてしまうため呼吸がしにくくなります。また、あまりにやせてしまうと呼吸筋の筋力が低下することで呼吸がしにくくなります。
栄養バランスのとれた食事によって体重を管理することは重要です。中でも筋肉の材料となるたんぱく質の摂取は、とても重要です。たんぱく質は肉や魚、乳製品、豆製品などに多く含まれます。ただし、腎臓の働きが悪い方など一部の方はたんぱく質の摂取制限が必要な方もいますので、現在通院している医療機関の担当医にお尋ねください。
4.運動
栄養の問題とも重複しますが運動不足になると体重が増えてしまい呼吸にはマイナスになります。呼吸筋や足の筋力を維持することで、日常生活の状態を高い状態のまま保つことができます。トレーニングジムでハードなトレーニングを行う必要は必ずしもありません(もしできるのであればそれに越したことはありません)。近所を散歩したり、体操やヨガを行ったりすることでも十分だと思いますし、場合によっては深呼吸を行うだけでも行わないよりは良いと思います。
間質性肺炎は進行すると、
「息苦しさ増強 → 閉じこもりがち → 運動不足 → 筋力低下 → 息苦しさ増強」
という悪循環に陥りやすいので注意が必要です。
このように、様々な種類や合併症が起こりえるのが間質性肺炎です。
なかなか、初期症状を判断するのは難しいと言えますし、自覚症状のない方も多いです。
改善方法で述べた事を注意し、少しでも気になる症状が出たら検査を受けましょう。
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