「ヘバーデン結節について」

「ヘバーデン結節について」

 日本にはへバーデン結節の推定患者が約3,000万人いるといわれています。医療機関や薬局様、薬店様でのご相談件数も増えています。いつまでもキレイな手でいたいと思うことは多くの人にとって切実な願いだと思います。 
 今回は、ヘバーデン結節になりやすい方の特徴、症状、予防や改善するためのセルフケアについてお伝えしていきます。

ヘバーデン結節とは?

 ヘバーデン結節は、指の第1関節の痛みや腫れ、骨の変形、指が曲がったまま伸びなくなる、手を握る際に強張ったような感じや痛みがある、指の爪の付け根に水ぶくれのようなものができているなどの症状が挙げられます。

 この結節は、指の第1関節で骨と骨の間の軟骨がすり減り、骨と骨が直接接触することで間接が変形し、骨棘(こつきょく)とよばれる硬い突起物が形成されることで発症します。変形が進むと関節がこぶのように盛り上がって目立つようになります。

 ちなみにヘバーデンとは、イギリス人医師の名前です。1802年にヘバーデン医師が手指の第1関節に慢性的な仮説リウマチや通風とは異なる病変が生じると指摘したことに由来して名づけられました。また、同じような変化が指の第2関節で起こると「ブシャール結節」といいます。また粘液脳腫(ねんえきのうしゅ)=ミューカス̪シストと呼ばれる水ぶくれが現れることもあります。痛みや指の動きが悪くなったり、強く握ることが困難になるなど日常生活に不快感を引き起こします。「関節リウマチ」と症状が似ており一見、見分けがつきにくいため早い段階で専門医に診断してもらいましょう。

原因となりやすい方の特徴

 医療の指針となる医療ガイドラインでは原因不明であり、治療は対症療法とされています。ヘバーデン結節のほとんどが40歳以上の女性に偏っています。この理由として、更年期になると閉経の時期をはさんだ前後10年間は、卵巣の働きが衰えて女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が急激に低下します。エストロゲンの分泌量が低下するとホルモンによって調整されていた身体の機能が上手に働かなくなります。エストロゲンには、関節の腫れやむくみを解消する「抗浮腫作用」がありますが、更年期にかけてエストロゲンが低下することで、腱や関節に影響が起こりやすくなるといわれています。また、ヘバーデン結節は腎臓と非常に近い関係性にあることも分かってきています。つまり、腎臓の働きを良くすることが、ヘバーデン結節の改善にも繋がっています。

 次にへバーデン結節になりやすい方の特徴です。

①加齢と遺伝的要素

 年齢を重ねるにつれて、軟骨が徐々に摩耗し、関節の弾力性が失われます。また、遺伝的な要因も強く影響して家族に同様の症状を持つ人がいる場合は、発症のリスクが高まるようです。

②生活習慣

 手作業が多い職業や趣味を持つ人は、指関節に過度な負担がかかりやすく、ヘバーデン結節を発症しやすい傾向にあります。特に手指を頻繁に使う動作や長時間の手作業は関節に過剰なストレスを与え、変形の原因となることがあります。

症状

1.痛み

 初期段階で痛みを伴い、指を曲げたり、伸ばしたりする時に生じることが特徴です。痛みがある場合は患部を無理に動かすことは避けましょう。さらに症状が進行して痛みが増して、変形が進む可能性があります。

2.腫れ

 指の第1関節の腫れも挙げられます。第1関節の痛みから始まり、進行するにつれて腫れる場合が大半です。関節の腫れは赤みを伴うことが多く、甘いものやコーヒーなどのカフェインを頻繁に摂取する方は赤黒くなる場合があります。

3.水ぶくれ

 関節の変形が進んでくると、稀に水ぶくれができる方もいます。水ぶくれは粘液脳腫(ミューカスシスト)とも呼ばれ、腫瘍の一種です。変形が原因で骨にトゲができ、関節内を満たす関節腋の出し入れが正常に行われなくなることで生じます。水ぶくれの割れを繰り返していると、関節の中に細菌が侵入して感染症を引き起こす可能性があるので注意しましょう。

4.爪の変形

 爪の近くで水ぶくれができると、爪が変形してくる場合があります。

予防

□へバーデン結節の予防に効果的な食養生

 基本的にはバランス良く1日に3食を摂ることが重要ですが、ヘバーデン結節の場合は、これだけを食べれば良いという食材はありません。しかし、摂取すると予防や症状の改善に期待できる食材がありますのでご紹介します。

1.女性ホルモンを補う食材

2.腎臓の働きを助ける食材

3.骨を強くする食材

1-1.大豆イスフラボンの摂取

女性ホルモンを補う食材は、大豆イスフラボンを含む豆腐、豆乳、納豆、味噌、厚揚げなどがあります。大豆イスフラボンは女性ホルモンであるエストロゲンに似た栄養素です。更年期特有のイライラ、のぼせといった症状を軽減する効果があります。これからご紹介する食材の中でも大豆イスフラボンは特に摂取すると良いでしょう。

1-2.ビタミンEの摂取

ビタミンEを多く含む食材は、かぼちゃ、アーモンドなどがあります。ビタミンEは、エストロゲンを始めとする様々な女性ホルモンの代謝を助ける栄養素であり、女性の不妊治療や更年期障害の治療にも使用されています。

1-3.ビタミンB6の摂取

ビタミンB6を多く含む食材は、カツオ、サンマ、バナナ、パプリカなどがあります。ビタミンB6は、エストロゲンの代謝を助け、ホルモンバランスを整える栄養素が含まれています。PMS(月経前症候群)、つわりの軽減にも役立つといわれています。

2.腎臓の働きを助ける食材

バナナ、ハト麦、シジミ、昆布、ひじき、イモ類、ゴマ、豆類、キャベツ、ほうれん草、スイカなどがあります。

3.骨を強くする食材

3-1. カルシウムの摂取

カルシウムを多く含む食材は、乳製品、小魚、海藻などがあります。カルシウムは骨を作るのに欠かせない栄養素であると同時に骨以外の細胞機能や神経の伝達にも不可欠な栄養素になっています。人間の身体は血中に一定濃度のカルシウムが保たれている必要があるのですが、カルシウムが不足してしまった場合、不足を補うために骨や歯からカルシウムが取り出されてしまいます。これを繰り返すと骨や歯の密度が徐々に低下、骨がもろくなり、骨粗しょう症にもなりやすくなるので日頃の食事から十分なカルシウムを摂取し、適度な運動と組み合わせることで骨を丈夫にしていきましょう。

3-2.ビタミンDの摂取

ビタミンDを多く含む食材は、きのこ類や魚に多く含まれています。カルシウムと一緒に摂るとより効果があります。ビタミンDは骨を健康に保つための脂溶性ビタミンです。カルシウムの吸収を助けて血中のカルシウム濃度を高めて骨の形成や石灰化を促す役割があります。また、ビタミンDは日光を浴びることで体内合成することができるので天気の良い日はウォーキングやジョギングなどの有酸素運動もおすすめです。

3-3.ビタミンK2

ビタミンK2を多く含む食材は納豆です。ビタミンK2は微生物によって作られ、骨の強化に役立つ脂溶性ビタミンです。

また、炎症を抑える働きがあるDHAやEPAなど脂肪酸を多く含むサバやイワシなどの青魚も積極的に摂取すると良いでしょう。

 

対策と治療方法

□対策

リン酸を多く含むハム、ソーセージ、インスタント麺などの加工食品、パン、スナック菓子などは体内のカルシウムを排出する作用があるため、摂りすぎには注意しましょう。バランスの摂れた食事を心がけ、肥満にならない体型づくりも関節への負荷を軽減するために重要です。さらに、スマートフォンの使用が手指の障害をきたすといわれますので、小指でスマートフォンを持つ動作がヘバーデン結節を誘発するとも考えられています。手指を酷使する作業はできる限り避け、定期的なストレッチや運動を取り入れることで関節の健康の維持をしていきましょう。

□治療方法

主に保存的治療、薬物療法、手術の3つの方法から検討します。

保存療法とは、テーピング、サポーター、金属リングなどで固定する方法です。次に薬物療法は女性ホルモンに似た働きを持つ「エクオール含有のサプリメント」、漢方薬、鎮痛剤、ステロイド剤の関節内注射などがあります。初期症状の緩和に効果が期待できる報告もありますので、早めに医療機関や薬局、薬店などにご相談しましょう。最後に手術は関節固定術、関節形成術などがあります。

 

まとめ

お伝えしたようにヘバーデン結節の原因は現在の医学で解明できていません。しかし、要因は生活習慣が大きく影響していると考えられています。一度、変形してしまった骨は元には戻りません。特に放置すると長い年月をかけて変形が進行するといわれています。指の変形や痛みを防ぐために自分にできる予防を行い、気になることがあれば迷わず早めの受診をしましょう。

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