夢健究会
私たちの身体は様々な器官で構成されています。
その一つ一つが大切な役割を担って健康に生きていけます。
今回はその中の「腸」について詳しくお話していきます。
小腸とは食物の栄養分のほとんどを吸収する、とてもたいせつな消化器官の一つです。
しかし、その特殊な形状や位置ゆえに今日までもっとも解明が進まなかった臓器でもあります。
それゆえ「暗黙の臓器」と呼ばれています。
<「消化」と「吸収」を行う消化器官>
小腸は胃と大腸の間にあって、十二指腸、空腸、回腸を総称して「小腸」といいます。その全長はなんと6〜7メートルにもなるといわれます。また小腸の内側は輪状のひだになっており、その表面には数百万もの絨毛(じゅうもう)と呼ばれる指状の突起があり、表面積はテニスコート約2面分もあるというから驚くべき広さです。
それで効率的な吸収が助けられるのです。小腸は胃や肺、大腸など他の器官と比べるとなんだか馴染みのない存在ですが、食物を消化し、栄養分を吸収するという、わたしたちの毎日の生活にとても重要な役割をもっています。
<消化の仕組み>
小腸では酵素をたくさんふくんだ小腸液が作られています。この酵素は、胃から運ばれてくるどろどろの粥(かゆ)状になった食べ物をほぼ完全に消化します。例えば、炭水化物を細かくして麦芽糖(ばくがとう)・ぶどう糖にしたり、脂肪を細かくして脂肪酸とグリセリンにします。このようにして作り変えられた栄養素は腸に吸収されます。
吸収された栄養素は血液によって肝臓(かんぞう)に運ばれ、残りのどろどろの粥(かゆ)状の物質は大腸へ運ばれます。小腸と大腸は、回盲弁(かいもうべん)で分けられています。回盲弁は、大腸の中の物質が小腸に逆流しないように開いたり閉じたりしています。
<小腸腫瘍>
発生頻度は消化管腫瘍全体の5%以下で、あまり多くありません。しかし、悪性度は高く、2/3は悪性腫瘍といわれています。悪性腫瘍に対しては主に手術が行われますが、手術ができない場合や転移性の腫瘍では放射線治療や化学療法が行われる場合があります。
<クローン病>
口腔から肛門周囲までの消化管のどの部位にも起こり得る、原因不明の炎症性腸疾患です。大腸や小腸が好発部位で、主に若者に発症します。腹痛や下痢、肛門部の痛みなどが生じますが、原因は不明です。根本的な治療法がないのが現状ですが、腸管の炎症を抑えるために栄養療法や薬物療法などが行われます。また、腸閉塞、穿孔(せんこう)、大量出血などが起こった場合は手術が行われます。
<腸閉塞(ちょうへいそく)>
腸閉塞(イレウス)は腸管が塞がれた状態(機械的イレウス)、あるいは腸管が麻痺した状態(麻痺性イレウス)をいいます。腸閉塞とイレウスは同じ病態とされてきましたが、区別されることもあります。特徴的な症状は腹部全体の痛み、便秘、嘔吐などです。絶飲食のうえ補液を行いますが、それでも症状が改善しない場合は手術が行われます。
<腸重積(ちょうじゅうせき)>
腸管の一部が後ろの腸管に引き込まれた状態になり、腹痛や嘔吐、血便などの症状がみられます。0~2歳の乳幼児によくみられ、原因が特定できないものがほとんどです。超音波やX線で病変部を観察しながら腸の重なりを戻したり、開腹手術や腹腔鏡下手術で病変を取り除いたりする治療を行います。
<消化管間質腫瘍>
消化管の粘膜下に発生する粘膜下腫瘍の一種です。患者数は少ないものの、半数以上が無症状で、内視鏡検査で異常を指摘され発見されることがあります。初発の場合は手術により病変部を切除しますが、胃や腸に発生していて病変部がそれほど大きくない場合は、腹腔鏡下で切除することがあります。
<吸収不良症候群>
食物を消化・吸収する過程に障害が起こる病気の総称です。小腸のほか、消化・吸収に関わる胃、十二指腸、膵臓、肝臓、胆道などの臓器に何らかの病気が生じたり、臓器を切除したりした結果起こります。栄養障害が起こり、下痢や脂肪便、体重減少などさまざまな症状がみられます。原因となる病気の治療と同時に、個々の病態に応じた栄養管理を行います。
<ベーチェット病>
口腔内アフタ性潰瘍、皮膚症状、ぶどう膜炎、外陰部潰瘍の4つを主症状とし、症状が落ちつく寛解期と悪くなる活動期を繰り返す原因不明の病気です。主に小腸や回盲部に潰瘍を伴い、腹痛、下痢、下血などの症状が現れるものは腸管型ベーチェット病といいます。症状により治療法が異なり、薬物療法や手術が行われます。
小腸が食物の栄養素を吸収するのに対して大腸は、水やナトリウムを吸収して便にし、肛門に運びます。食物が口から入り便として排出されるまでの所要時間は約24〜72時間といわれています。また、大腸菌や乳酸菌など100種類以上の細菌が存在するとされ、胃や小腸で消化されない食物繊維をエネルギー源に分解したり、感染を予防したりするはたらきもあります。
大腸の長さは1.5メートルほどで、盲腸(もうちょう)、結腸(けっちょう)、直腸に分けられます。
【盲腸】
盲腸には、小指くらいの大きさの虫垂(ちゅうすい)という袋があります。盲腸は退化した器官で、特別なはたらきはしていないと考えられています。
【結腸】
結腸は、便を作るはたらきをしています。水分を吸収し、便を作るほか、ナトリウムなどの電解質を吸収しています。さらに、小腸で消化しきれなかった食物繊維などを発酵させ、便を直腸へ送ります。
【直腸】
直腸は、便を一時的に溜めておくはたらきをしています。直腸が便でいっぱいになると排泄(はいせつ)したくなり、腸の一部や腹部の筋肉が収縮し、同時に肛門の筋肉が開いて便が外に押し出されます。
【感染性腸炎】
感染性大腸炎とは、細菌感染やウイルス感染により大腸が炎症を起こしている状態です。
夏は細菌によるものが多く、冬はノロウイルスなどのウイルスによるものが多いです。
<症状>・下痢・腹痛・下血、血便、発熱を伴うこともあります。
<原因>・細菌・ウイルス
【大腸憩室炎】
“憩室”とは、大腸の壁の一部が外に向かって飛び出した風船状の袋のことをいいます。
大腸憩室炎とは、この憩室の中で炎症が起きている状態です。
憩室があるだけでは症状はありません。
<症状>・下腹部の痛み・下痢・便秘・軽い発熱
<原因>・細菌
【過敏性腸症候群】
過敏性腸症候群とは、大腸に潰瘍や炎症などの異常がないにもかかわらず、慢性的に腹痛や下痢、便秘などの症状がある状態です。
<症状>・下腹部の痛み・下痢・便秘
<原因>・ストレス・生活リズムの乱れ・アルコール
【大腸ポリープ】
胃や胆のうにもポリープはよくできますが、これらの多くは良性で切り取る必要はありません。
大腸ではと言うと、「腺腫」(せんしゅ)という種類の腫瘍性のポリープが多く、これが、特徴でもあり、問題でもあります。
ただ、他にも、炎症性のものや腫瘍でなく、ほっておいてよいものももちろんあります。
がんになりやすいポリープとは、以前は2cm以上といわれましたが、1cm以上はすでにあぶない状態です。
大腸癌のできかたは、ふた通りありまして腺腫という前癌状態から移行していくのと、「de novo」といって、いきなり小さな癌ができるタイプがあります。これは扁平なかたちで表面型といわれるものに多くて小さくても危険な場合があります。
つぎに、5箇所、10箇所とたくさんできるような人も、リスクがたかくなります。
そして、常染色体優性遺伝である家族性大腸腺腫症というのがありますが、100個以上ポリープができるのが特徴で、必ずがんが発生し、20歳代でがんになることも多い病気です。大腸ポリープとは、大腸の内面にできる隆起のことです。症状がないことが多く、便潜血検査で判明することが多いです。
大腸のポリープは胃のポリープと異なり、がん化しやすいのが特徴です。
<症状>自覚症状はほとんどありません。
<検査>・便潜血検査・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
【大腸がん】
約30~40年前までは欧米に比べ、日本では大腸癌は少なく、めずらしい方の癌でした。
しかし、今の日本はというと、ものすごい勢いで大腸癌は増えてしまっていて、欧米と差がないどころかアメリカやイギリスより実は多くなってしまっています。さらに、すでに女性では癌の臓器別死亡率の1位は大腸癌となっています。
「罹患率(りかんりつ)」といって大腸癌になる人の割合は急増していて、2015年には胃がんや乳がんを抜いて最も多くなるといわれています。また、これは、主に、開腹手術を受けた患者さんの統計結果で、内視鏡で取れた早期がんを含めた統計では、今現在でも、他の臓器に比べ異常なほど多いがんとなっています。
大腸の内側の粘膜や十二指腸の内側の粘膜に発生するがんです。
日本のがん疾患における罹患率が高く、死亡率も高いがんです。
自覚症状がなく、健診で発見されることが多いです。発見が早期であれば、内視鏡などで除去することができます。
<症状>初期は自覚症状がありません。進行すると、下痢や便秘、血便、下血を繰り返します。
<検査>・便潜血検査・大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
【虫垂炎】
大腸の入り口にある盲腸には、5~10cmほどの突起物があります。この部分を“虫垂”といいます。
虫垂炎は、ふん石(消化管の内容物)などが蓄積し、虫垂が炎症を起こしている状態です。急激な腹痛が特徴です。一般的に「盲腸」と呼ばれます。
放置すると穴があいて、膿がおなかの中に浸出し、腹膜炎になることもあります。
<症状>・右下腹部の痛み・みぞおちの痛み・吐き気がある
腸活とは?
腸活とは、生活習慣などを見直したり腸内環境のバランスを整えることです。
腸内には善玉菌(有用菌)と悪玉菌(有害菌)が存在し、腸内の悪玉菌を減らし善玉菌を増やすことで腸内環境のバランスが整います。代表的な善玉菌には主にビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌などがあります。
健康に欠かせない腸内細菌 腸内フローラは多様性も大切です。
先ほどもお話したとおり、小腸は全長が6~7m、大腸はおよそ1.5mある消化管で、腸内にはおよそ1,000種類の多種多様な細菌が約100兆個も生息しているといわれています。それらの細菌が集まってできたものは腸内細菌叢(そう)や腸内フローラと呼ばれ、重さは1~2kgほどです。腸内細菌の中には善玉菌、悪玉菌、その中間である日和見(ひよりみ)菌の3グループが存在し、個人差はありますが、割合としては善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7が理想的だとされています。
善玉菌は、腸内を弱酸性に導く酪酸・酢酸などの短鎖脂肪酸や、乳酸を作り出し、体の健康を維持する重要な役割を果たしています。
ただし、最近の研究では善玉菌とされていたものの中にも腸にとって良い働きをする菌とそうでない菌がいたり、悪玉菌や日和見菌だと思われていたものの中にも、腸に有用な働きをする菌がいたりすることがわかってきています。そのため、腸内細菌の割合だけでなく、腸内にさまざまな種類の菌が存在する多様性のある腸内環境を作ることも大切です。
腸活の方法
<食物繊維やオリゴ糖が豊富な食材を摂る>
食物繊維やオリゴ糖は消化・吸収されずに大腸まで届き、善玉菌のエサとなって善玉菌を増やす作用があります。これらの成分は「プレバイオティクス」と呼ばれ、積極的に摂取することで腸内環境を改善することができるでしょう。
食物繊維が豊富な食材は、野菜、果物、豆類、海藻類などが挙げられます。中でも、イモ類や海藻類などの水溶性食物繊維は善玉菌のエサになりやすいため、いつもの食事にプラスするなど、積極的に摂取しましょう。日常の食事で食物繊維の摂取量を増やすには、普段食べている白米やパンを玄米や全粒穀物に変えるのもおすすめです。
また、オリゴ糖が多く含まれる代表的な食材には、大豆、タマネギ、ゴボウ、ニンニク、アスパラガス、バナナなどがあります。ただし、オリゴ糖を摂り過ぎると下痢やお腹の張りを引き起こすこともあるため、注意しながら摂取しましょう。
<発酵食品を摂る>
発酵食品には健康に有用な生きた善玉菌が多く含まれており、腸内環境を整えてくれる作用があります。これらは「プロバイオティクス」とも呼ばれ、普段の食事に取り入れることで、腸内環境の改善が期待できます。
代表的な発酵食品にはヨーグルト、乳酸菌飲料、納豆、漬物などがあります。ヨーグルトなら1日1カップ(200g)程度を目安に普段の食事にプラスしてみましょう。
<サプリメントや整腸剤を活用する>
善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌、酪酸菌が含まれるサプリメントや整腸剤の活用もひとつの方法です。
善玉菌の中でも特に酪酸菌は限られた食材にしか存在せず、普段の食事から摂取することは難しいもの。酪酸菌が配合された整腸剤などから摂取することが手軽でおすすめです。
<適度な運動を取り入れる>
適度な運動も腸活に有用です。特に腹筋運動は、腸腰筋という筋肉が鍛えられ、腸が刺激されやすくなり便秘解消の効果が期待できます。また、腸内細菌と運動との関係も指摘されています。例えば、プロのラグビー選手は普段運動をしない人と比べて腸内の善玉菌が多いという研究結果や、アスリートの腸内フローラと運動パフォーマンスの相関関係についても報告があります。
また、日々の運動習慣も腸内の酪酸菌を増やすのに効果的だといわれています。やや強度の高い運動を30〜60分間、週に3回、継続して実施するのが理想的とされており、具体的には、腸に刺激を与えるための手軽な運動としてウォーキングやジョギング、階段の上り下りなどを日常的に行うのが良いでしょう。
<マッサージ>
マッサージを行うのも良いでしょう。お腹に少し圧をかけるようにマッサージすることで腸が刺激され、動きが良くなり便秘や排便回数、便の状態が改善されるといわれています。
腸のぜん動運動を促すマッサージの方法
①腸の内容物が進む方向に合わせて「の」の字にマッサージ
②左右の脇腹を上下に揉む
③下腹部を上に押し上げるように圧迫する
※ぜん動運動とは? 筋肉が伸び縮みをくり返して、内容物を体外へ移動させる動き
このマッサージは入浴中に行うと加温効果と相まってさらにおすすめです。ただし、お腹のマッサージは食後1時間以内は避けましょう。また、妊娠中の方や胆石や腎臓結石がある方などは控えてください。気になる方は主治医の先生に相談してから行いましょう。
<十分な睡眠をとる>
しっかりと睡眠をとることも大切な腸活のひとつです。睡眠不足によって腸内フローラが乱れてしまうおそれがあることも報告されています。睡眠の質が向上することで腸内細菌のバランスが整い、エネルギー代謝や基礎代謝の向上につながります。規則正しい睡眠を心がけましょう。
いかがだったでしょうか?
生きる為にとても重要な器官。わかっていてもなかなか日常生活でケアできないのが現実です。
今回ご紹介した腸活を日々の生活に取り入れて、病気のない健康な身体を維持していきましょう!
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