夢健究会
人間の身体と切っても切り離せない「痛み」。肩が重い、膝が痛い…と年齢を増すごとに頻度や回数もまた増えていくものです。今回は「腰痛」というテーマに絞って記事を書かせて頂きました。
腰痛は病名ではなく体に表れる症状の名前です。
腰そのものの問題がある場合だけでなく、職業、生活習慣、ストレスなどの要因が複雑に絡んでいるため、自分の生活をかえりみることが腰痛の原因を知るための第一歩となります。
病気やけがによる自覚症状の調査では男性、女性ともに上位が腰痛となっており、誰もが経験しうる身近な症状です。
多くの人が経験する腰痛ですが、その腰痛のほとんどは原因不明と言われています。
このように原因を特定しにくい腰痛を『非特異的腰痛(ひとくいてきようつう)』と言い、一般的に『腰痛症』と診断されます。
そしてこの非特異的腰痛の原因には、腰の椎間関節や筋肉など、さまざまあると考えられています。
腰痛というと「椎間板」を自動的に連想する人も多いかと思います。
背骨の腰の部分には、5つの椎骨で構成される腰椎があり、私たちの姿勢や動作を支えてくれています。この椎骨と椎骨の間にあってクッションの役割を果たしているのが「椎間板」です。
椎間板の内部、中心部分にはゼラチン状の髄核があり、この髄核の周囲は線維輪という組織が髄核を守るように囲んでいます。
私たちが身体を曲げてお辞儀をするときなどは、椎骨に椎間板がギュッと挟まれるため、内部中心の髄核も、腰の動きに合わせて後ろへと移動します。座る、立つ、歩く、身体を曲げる、まわすなど、私たちは日常さまざまな動きをしますが、そのたびに腰椎の椎骨に挟まれた椎間板は動きに合わせてさまざまな動きをしているわけです。
つまりそのたびにゼラチン状の髄核もずれているのですが、この「ずれ」によって、徐々に髄核の周囲を囲む線維輪をも傷つけてしまっているのが実情です。そして、これが何かの拍子である一線を超えたとき、髄核が線維輪を突き破り、神経を圧迫するため、「腰椎間板ヘルニア」と診断され、腰痛はもとより、足の痺れや動かしにくさという症状まで併発してしまいます。
座る、立つ、歩く、身体を曲げる、ひねる、まわすなど、腰はさまざまな動きをしています。この動きに応じて、当然ですが周囲の筋肉もさまざまに動き、その動作サポートしながら支えています。
例えば、椅子から立ち上がったり座ったりする時には「脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)」が、重いものを持ち上げるときなどは背骨を支えるために「多裂筋(たれつきん)」が、そして腰をひねったりするときには「腰方形筋」が働いています。
こうして私たちは毎日さまざまな筋肉のおかげで多様な動きを重ねることができているのですが、筋肉も酷使をされると緊張が続き、こわばっていきます。すると筋肉内の血流が悪くなり、酸欠状態となり筋肉疲労が起こります。年齢を重ね、筋肉が弱くなっていくことで起こる場合もあります。
筋肉疲労は周囲の神経を刺激するので、それが「腰痛」となって現れます。しかしこの腰痛はレントゲンなどの画像検査でも確認できず、原因を特定できないため「非特異的腰痛」のひとつに数えられます。
心理的ストレスは脳機能に影響を及ぼし、その結果身体にさまざまな不調が現れます。
睡眠障害やお腹の不調などは、ストレスの影響として多くの人が考えるのではないでしょうか。
実は腰痛もストレスによって引き起こされることがあります。
そのメカニズムの一つとして考えられるのが血行不良です。心理的ストレスにより冠動脈が一時的に痙攣をおこし、それによって動悸や息苦しさが起こることがあります。
これと同じようにストレスにより腰の筋肉の血流が悪くなり腰痛を起こすと考えられています。
また、腰の器質的な問題よりも、腰の痛みを感じるシステムの不調により痛みが引き起こされていることもあります。
通常痛みの信号が脳に伝わると、脳からドーパミンという神経伝達物質が放出され、μオピオイドという物質が脳内で大量に放出されます。その結果、痛みが緩和されたり、感じにくくなったりするのです。
しかし、ストレスが脳機能に影響を与えた結果、ドーパミンが放出されにくくなり、痛みが長引いたり、わずかな痛みも強く感じるようになったりしてしまうのです。
このようにストレスは腰痛を悪化させる原因となりますが、腰痛そのものがまたストレスの原因となり、悪循環に陥ってしまうケースもあります。
上で述べたように、痛みの緩和にはドーパミンの放出が肝心ですが、痛みによってストレスを感じた結果、よりドーパミンが放出されにくくなり、それによりまた痛みを感じるという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
腰痛になってしまったときに、どのように対処し改善していけばよいのでしょうか?
腰痛になってしまった場合のセルフケアや、腰痛にならないための日常生活での心がけについてご紹介しましょう。
・悪い姿勢で座らない
腰痛を引き起こす姿勢で多いのが、猫背のような悪い姿勢での着座です。
そこで、座ったときに「腰椎前彎(ようついぜんわん)」を作るようにしましょう。
「腰椎前彎」とは腰椎のS字カーブ(腰の上のくぼみ)のことで、まっすぐ立つと自然に形成されますが、前かがみなど腰を丸くするとなくなります。この悪い姿勢を長時間続けると、腰の靭帯が疲労して引き延ばされ、靭帯が傷んで腰痛を引き起こします。
腰痛改善のためには、座る姿勢を正すことと、ある程度の時間が経ったら立ち上がる、動くなどの対策が大切です。
・正しくものを持ち上げる
腰を丸めたままの間違った姿勢で重いものを持ち上げることは、腰痛持ち場合禁物です。重いものを持ち上げる際には、その直前・直後に立った姿勢で腰を5~6回反らしましょう。
そして足を広げ、まずは立った姿勢での腰椎前彎を作ります。
次に、この腰椎前彎を保ったまましゃがみ、荷物をつかみ、バランスを保ちながら姿勢を少し後ろに傾け、腕を伸ばしゆっくり持ち上げます。このとき反動はつけません。荷物を降ろすときはこの逆の手順で行います。
・正しい寝具を使う
寝ている時だけ腰が痛くなる、あるいは朝起きたら腰痛が起きていたという場合は、寝具に問題があるかもしれません。できるだけ正しい寝姿勢を保てるよう、腰に負担をかけず、身体の重みで沈み込まないマットレスや敷布団を選びましょう。とはいえ硬すぎるマットレスはよくありません。下にしっかりとした支えがあれば、指で押したあとがゆっくり戻るような中程度の柔らかさの方が快適な場合があります。
・適度に身体を動かす習慣をつける
腰痛になっても安静期間は2日間まで、適度に身体を動かすほうが改善も早くなります。
おすすめは毎日続けることができ、脳の血流を促し、痛みを抑える物質が増加すると言われる有酸素運動です。例えばウォーキングや水泳などがよいでしょう。
すべての腰痛に筋トレが効果的とは限りません。筋トレをはじめる前に、腰痛の原因を確認しておくことが大切です。
そして、腰痛対策に筋トレを取り入れるときに注意したいのが、無理をしないことです。
痛みがあるのに我慢して行う必要はありません。自分のペースを守って痛みが出ない程度にしましょう。また、筋トレは効かせる部分を意識することも重要なポイントです。
前屈腰痛とは、物を拾うなど前かがみの姿勢になったときに生じる腰痛です。
背骨が弱い場合や、姿勢が悪くて猫背になりやすい人に多く見られる腰痛の症状です。長時間のデスクワークも前かがみの姿勢が続くので、前屈腰痛が生じやすくなります。
前かがみになったときに腰の痛みを感じる場合は前屈腰痛に該当すると考えられ、揉みほぐしてもあまりよくなりません。前屈腰痛の予防には、背筋を鍛える筋トレを取り入れるとよいでしょう。
前屈腰痛に適した筋トレ①
1.床にあお向けになり両膝を曲げて立てます
2.両手は身体の横に伸ばして手のひらを床につけます
3.お尻を持ち上げて膝から首まで一直線にします
4.そのまま20秒キープしましょう
前屈腰痛に適した筋トレ②
1.肩幅に足を広げてまっすぐ立ちます
2.手は握り拳を作って左右の腰にあてます
3.そのまま15秒キープしましょう
慣れてきたらキープする時間を伸ばしていきましょう
のけぞり腰痛とは、赤ちゃんを抱っこするときや電車でつり革につかまっているときなど、腰が反る動作をしたときに生じる腰痛です。腹筋が弱くてそり腰になっている人に多く見られ、女性に起こりやすい腰痛の症状です。身体を反らせたときに腰の痛みを感じる場合は、のけぞり腰痛に該当すると考えられます。のけぞり腰痛も揉みほぐしてもあまり改善できないため腹筋を鍛える筋トレを取り入れましょう。
のけぞり腰痛に適した筋トレ
1.あお向けになり両膝を曲げて立ちます
2.お腹に空気を入れるイメージで、息を深くゆっくり吸っていきます
3.お腹をふくらませきったら、ゆっくり息を吐いていきお腹をへこませていきます
4.同じ動作を5~10回おこないます
あお向けの姿勢だけでなく、立ったままや座っているときにもできる筋トレです。大きな動作が必要ない簡単な筋トレなので、仕事の合間や移動時間を活用しておこなえます。
このように、腰痛といってもさまざまな原因があることがわかりましたね。
あなたの腰痛の原因は何だったのか、どう対策したらよいのか今一度考え、自身のために日々の生活習慣を見直し、健康で元気な身体を作っていきましょう。
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