増加傾向にあるクローン病!

増加傾向にあるクローン病!

IBD(Inflammatory Bowel Disease)
炎症性腸疾患のことで、一般的には潰瘍性大腸炎とクローン病のことを指しています。

大腸及び小腸の粘膜に慢性の 炎症 または潰瘍をひきおこす原因不明の疾患の総称を 炎症性 腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)といい、狭義にはクローン病と潰瘍性大腸炎に分類されます。
 クローン病も、この炎症性腸疾患のひとつで、1932年にニューヨークのマウントサイナイ病院の内科医クローン先生らによって限局性回腸炎としてはじめて報告されました。

近年、患者数は急激に増え続けており、厚生労働省の指定難病となりました。治療には難病医療費助成制度(医療費の支援)が受けられます
 

クローン病とは?

クローン病は、口腔から肛門まで、消化管のどの場所でも起こります。小腸や大腸を中心に慢性的な炎症が起き、びらん(局所的で浅い傷)や潰瘍(深くえぐれた傷)ができる病気です。多くの場合、下痢や腹痛、発熱、体重減少などを伴います。

クローン病の炎症は、一箇所だけではなく消化管内に断続的に発生し、粘膜の浅い層から消化管壁の深い層まで進行していきます。

炎症の発生部位は患者さんによってさまざまで、炎症が小腸のみに発生しているものを「小腸型」、小腸と大腸に発生しているものを「小腸大腸型」、大腸のみで発生しているものを「大腸型」、3つのどれにも当てはまらないものを「特殊型」と呼びます。

クローン病は、同じ炎症性腸疾患(IBD)である潰瘍性大腸炎と同様に、国の指定難病の1つです。難病というと、不安に思われる方もいるかもしれませんが、適切に治療を続けることで、これまでとあまり変わらない生活を送る人が増えてきました。

知っておこう!
消化管の仕組み

【消化管とは】
私たちは食物を消化し栄養を吸収することで生命を維持するために必要なエネルギーを得ています。食物を体内に取り込み、消化、吸収し、最終的には不要物を排泄するまでの役割をになう器官が消化器です。消化器は、胃や腸はもちろん、食物を取り込む口(口腔)や栄養素を貯蔵・加工する肝臓なども消化器に含まれます。消化器のうち、食物や水分の通り道となる部分が消化管です。

消化管は口腔にはじまり、咽頭、食道、胃、小腸(十二指腸、空腸、回腸)大腸、肛門までを指し、全長は約6mです。食物はこの消化管を通り消化・吸収されますが、消化吸収されなかった残りかす(不要物)が糞便となり排泄されます。

【消化管の働き】
1)口:食物が口内で咀嚼される間に、唾液と混ざり、唾液中のアミラーゼによりデンプンの消化が始まります。
2)食道、胃、十二指腸:食物は食道を通過し胃に到達すると、一旦胃内に貯留し撹拌され、胃液中の 酵素 や酸によってタンパク質の   化が始まります。
3)小腸:胃で撹拌された食物は十二指腸に流れ込み、そこで膵液や胆汁と混ざり、さらに各種酵素の消化作用を受けつつ、小腸内を移動していきます。この移動の間に各種栄養素が吸収されます。
4)大腸:大腸では水と電解質が吸収され、消化吸収されなかったものや老廃物を肛門まで運搬します。

症状や合併症

◯主な症状
クローン病の症状は患者さんによってさまざまで、どこに炎症が起きているかによっても異なります。最も一般的な症状は下痢と腹痛であり、患者さんの半数以上にみられます。また、体重減少や発熱といった全身症状が発生するケースも多いです。潰瘍性大腸炎と同じく、血便がみられることもありますが、さほど頻度は高くありません。これらの症状は常に出現しているわけではなく、多くの場合、改善したり悪化したりを繰り返します(再燃寛解)。

・腹痛

・発熱

・体重減少

◯合併症
クローン病は、進行すると消化管の内外にさまざまな合併症を引き起こすことがあります。腸管に発生する合併症は「腸管合併症」と、腸管以外の全身に発生する合併症は「腸管外合併症」と呼ばれています。

主な腸管合併症には、腸管内が狭くなったり閉塞したりする「狭窄(きょうさく)」や「腸閉塞」、腸管に穴があく「穿孔(せんう)」、腸管同士や腸管と他の臓器がつながって内部でトンネルを形成する「瘻孔(ろうこう)」、膿がたまる「膿瘍(のうよう)」などがあります。
また、クローン病では、肛門付近が膿む「肛門周囲膿瘍(のうよう)」や、肛門周囲の皮膚と直腸がトンネルのようにつながってしまう「痔瘻(じろう)」など、肛門病変もよくみられます。さらに、クローン病が長期間続くと、がん(小腸、大腸、痔瘻)の発症リスクが高くなると考えられています。治療にあわせて、定期的にがん検査を受けることが大切です。

原因

まずはじめに、クローン病の原因は未だはっきりしていません。
以下にあげる説が、候補として考えられてきました。

☆ 遺伝的な要因の関与

☆ 結核菌と類似の細菌や麻疹ウイルスによる感染症

☆ 食事から摂取した何らかの成分が、腸管粘膜に異常な反応を引き起こしている

☆ 腸管の微小な血管の血流障害

最近の研究では、遺伝や環境を背景に、食事や腸内細菌に対して免疫異常を起こして発症することが考えられています。

クローン病と類似した症状が現れる疾患

クローン病とよく似た症状で、判別が難しい疾患は以下の3つです。

・潰瘍性大腸炎

クローン病と同じ炎症性腸疾患に分類され、厚生労働省の指定難病になっています。
おもな症状として、血便や下痢、腹痛などの症状が慢性的に続くのが特徴です。大腸の粘膜(もっとも内側の層)にびらんや潰瘍ができる疾患です。上行性(口側に広がる性質)があり、直腸から大腸全域に拡がります。
発症年齢のピークは男性で20~24歳、女性は25?29歳ですが、若年者から高齢者まで発症し、男女比はありません。
診断には、問診や採血などで感染症の有無を検査し、大腸内視鏡検査のときに組織を採取して調べる検査(生検)をします。

・NSAIDs潰瘍

NSAIDs潰瘍とは、熱、痛み、炎症を抑える薬の副作用によって起きる潰瘍です。「Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs」の頭文字を取っており、非ステロイド性抗炎症薬と訳します。
自覚症状は上腹部の痛みが多く、胃もたれ、胃の不快感などです。症状が進み出血を伴う場合は、運動時の息切れ、めまい、立ちくらみなどの症状があり、吐血、黒色便が現れることもあります。

・腸結核

腸結核とは、結核菌が直接または間接的に消化管や近くのリンパ節へ感染することで起きる腸管の炎症性疾患です。
近年は減少傾向にありますが、高齢者を中心に、年間約250例が診断されています。
自覚症状はクローン病と似ており、腸結核の診断は内視鏡検査時の生検の結果でわかるため、検査を受けるまでは判別がつきません。

まとめ

クローン病は炎症性腸疾患の一つで、厚生労働省の難病に指定されています。おもに若年者に発症し、近年患者数は急激に増え続けている状況です。腹痛、下痢、体重減少、発熱などがよく見られる症状で、腹痛と下痢の症状は半数以上の方に起こります。
治療方法は、栄養管理と投薬の内科的治療が中心です。しかし、腸管の狭窄、穿孔、瘻孔、痔などの合併症が発生した場合は、外科手術や内視鏡手術が行われます。
最近では、効果的な治療薬も開発されて、症状のコントロールができるようになりました。
症状の寛解期では、健康な人と変わりなく、就学や就労が可能です。
治療法の選択肢も増えてきていますので、自身のライフスタイルにあった方法を主治医と相談して、より良い治療をめざしましょう。

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