「誤えん性肺炎」

「誤えん性肺炎」

 日本人の死因で上位に入る肺炎。肺炎患者の約7割が75歳以上の後期高齢者で、70歳以上の前期高齢者肺炎のうち、7割が「誤えん性肺炎」で亡くなっています。
 皆さんも食事中に咳き込む、食事中に淡(たん)がらみのような状態になる、錠剤が飲みにくいと感じることはないでしょうか?このような状態が出ている時は、食べ物が気管の中に入り込んでいる可能性があります。今回は、「誤えん性肺炎」になる原因や症状、すぐにできる予防対策についてもご紹介します。ぜひ、参考にしてみてください。

「えん下と誤えんについて」

 食べ物を飲み込むことを「えん下」といいますが、喉(のど)の筋力が落ちると「えん下」機能も低下します。特に高齢者や脳疾患の後遺症などにより、えん下機能や咳をする力が弱くなると口腔内の細菌、食べかす、逆流した胃液などが誤って気管に入りやすくなります。気管に入ってはいけない物質が気管に入り込むことを「誤えん」といいます。また、誤えんによって細菌やウイルスが肺に入っておこる肺炎を「誤えん性肺炎」といいます。食事中や睡眠中に起こりやすいので、日頃から誤えんしないように注意と予防をすることが大切です。さらに1日に飲む唾液の量は、健常な人で1時間に18回程度、1日にするとおよそ1.5リットルの量になります。しかし、誤えん性肺炎を起こす人は1時間に5回程度と少なくなることも特徴となっています。

「誤えん性肺炎の原因」

1.えん下機能の低下…

  誤えんが起こると、反射的に咳をして、気管に入ったものを口内に戻しますが、高齢者や脳卒中など脳に疾患のある人は、咳反射がうまくできないことが多く、誤えん性肺炎になる場合があります。

2.えん下障害…

  アルツハイマー型認知症や脳卒中、パーキンソン病などの神経疾患、脳梗塞の後遺症、食道がんや喉頭(こうとう)がんなど咳の腫瘍が原因の場合と高齢者は食べ物を飲み込む機能が低下するため、えん下障害を起こしやすくなります。

3.   口内環境が清潔ではない…

  歯垢(しこう)1g中に2億5千万個の細菌が存在しているといわれています。歯磨きや義歯の手入れが不十分だと、食べかすなどが口の中に残ってしまいます。口内環境が良くないと細菌が多く繁殖しやすくなり、飲食物や唾液と一緒に気管に入ってしまうことがあります。

4 .   免疫力の低下

  不規則な生活により、免疫力が低下し、発症してしまうことがあります。  

「不顕性誤えん」

 健常な人は、誤えんをすればむせるという生体の防御反応が起こりますが、えん下障害を患っている人は誤えんしてもむせない人がいます。むせない誤えんを不顕性誤えんといいます。喉頭(のどの奥)の感覚が良くないために、入ってはいけない食べ物や唾液が入ってきても無症状の状態になります。喉頭の感覚が低下する原因は、脳卒中の後遺症としての感覚障害や加齢などが挙げられます。食べ物を誤えんしても咳がないので、一見、食べられているように誤解してしまうことが怖いところです。

「主な症状」

□発熱(37.5℃以上)

□7日以上も咳が続く

□粘り気のある淡(たん)や黄色や緑色の濃い淡が出る

□息苦しい

□動悸がする

□食欲がない

□元気がない

など風邪に似た症状が見られます。高齢者の場合は、食事中にむせたり、咳こむことがない誤えん(不顕性誤えん)も多く、知らず知らずのうちに誤えん性肺炎を発症している場合もあります。治療が遅くなると回復が難しくなり、最悪の場合、死に至ることもあります。

「予防と対策」

 私たちは、毎日食事を摂っていますが、その時、必ず飲み込む動作を行います。飲み込むためには、さまざまな筋肉や神経が連動して行われます。40歳頃から飲み込む筋力の衰えが始まります。60歳頃になるとさらに急激に筋力が衰えて摂食えん下障害を起こします。

 食べ方の工夫、ストレッチ、口腔ケア、免疫力を高めることで誤えん性肺炎のリスクを減らすことができます。

≪食べ方の工夫≫

・市販のとろみ剤、水溶き片栗粉、ゼラチン、あんかけや卵とじにすると飲み込みやすくなります。

・お餅や団子は喉に詰まる危険があるため、一口サイズに切って食べるようにしましょう。

・食事の前に水分を摂り、喉の通りを良くさせましょう。

・少量をゆっくり噛んで食べましょう。30回以上、噛む意識を心がけましょう。

・口の中にある物を飲み込んでから、次の食べ物を口の中に入れるようにしましょう。

・背筋を伸ばしてあごを引き、椅子に深く腰を掛けて姿勢を正しましょう。

・また、食後すぐに横になるのはやめましょう。食べ物の消化にかかる時間は平均3時間、早くて1.5時間程度かかります。

   食後1~2時間は身体を起こしておくと、胃からの逆流を防げます。

・携帯電話、新聞、テレビなどを見ながら食事をすると、そちらに気を取られて飲み込むことがおろそかになり、誤えんしやすくなるので控えましょう。

≪ストレッチ≫

□飲み込む力をつける運動

加齢とともに下がる喉仏を維持するためには、喉の筋肉を鍛えることが大切です。

・少量のお水を口の中に含ませる

・力強く飲み込んで止める(3~5秒)のどの可動域を広げる効果があります。

・額に手を当て、押しながらゆっくり5秒数えながら下を向く。

□舌だし運動

唾液分泌やのどの可動域を広げる効果があります。

・舌を大きく出し入れして、のどを間接的に動かす。

・舌で左右の頬を内側から押す。

・舌を口の中で弾いて「タッ」と音を立てて鳴らす。

□歌を歌う

・高い声や低い声を出してのどの上下運動をしてみましょう。

□発声練習

・大きな声で発声し、腹式呼吸を行います。肺活量、声域、滑舌の維持にもつながります。また、咳反射にも効果があります。

□吐き出す力を高める運動

・深呼吸をすると吐き出す力を高める効果があります。

≪口腔ケア対策≫

・口の中の細菌を減らすため、起床したら、水で口の中をすすぎましょう。

・食事後は歯磨きをしましょう。舌ブラシで舌の掃除をするとより効果的です。口の中を清潔に保っておけば例え、誤えんしても肺炎になるリスクを減らすことができます。

・義歯は丁寧に洗浄しましょう。

・眠っている時に唾液が気管に流れ込み、肺炎になることがあるので、就寝前の歯磨きも忘れずに行いましょう。

・定期的に歯科医院で口内チェックと嚙み合わせに支障がないかを診てもらうと良いでしょう。

≪免疫力を高める≫

・十分な睡眠を取りましょう。

・主食、主菜、副菜などバランスの良い食事を摂りましょう。特に肉、魚、大豆などのたんぱく質を摂取することが、免疫力アップになります。

 どうしても食欲がない時は、栄養補助食品などで栄養を補うと効果的です。

・室内で過ごす時間が長い時は、室内を換気し、新鮮な空気を取り入れましょう。

まとめ

 誤えん性肺炎は特に高齢者に多く見られます。風邪なのか肺炎なのかを判断することが難しいといわれています。風邪っぽい症状であっても咳が続くなどの状態があれば、内科クリニックや呼吸器内科クリニックで診てもらいましょう。

 また、調理方法、食事の摂り方、食事中の姿勢、口内環境を整えることで誤えん性肺炎のリスクを減らすことができます。誤えん性肺炎に関わらず、病気は生活習慣の積み重ねが原因で発症することも少なくありません。日々の生活習慣を少し見直すことで多くの病の予防につながります。毎日を楽しく元気に過ごすために皆さんも意識してみてはいかがでしょうか?

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