夢健究会
三月になり少しずつ春の気配がしてきました。
植物や動物たちも動き出す今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか。
春先は季節の変わり目や環境の変化などで肝のたかぶり(神経がたかぶりイライラしたり、ストレスを感じやすくなったり)により自律神経が乱れたりして体に不調が出やすい季節です。
そこで今回は、帯状疱疹についてお話したいと思います。
帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルスで起こる皮膚の病気で、体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状に生じます。
症状は主に上半身に現れ、顔面、特に目の周りにも現れることがあります。
皮膚症状が現れると、ピリピリと刺すような痛みとなり、夜も眠れないほど激しい場合があります。
帯状疱疹は、多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。
水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内(神経節)に潜伏していて、過労やストレスなどで免疫力が低下すると、ウイルスが再び活性化して、帯状疱疹を発症します。
発症すると皮膚の症状だけでなく、神経にも炎症を起こし、痛みが現れます。
神経の損傷がひどい場合、皮膚の症状が治った後も痛みが続くことがあります。
日本人成人の90%以上は、このウイルスが体内に潜伏していて、帯状疱疹を発症する可能性があると言われています。
加齢、疲労、ストレスなどによる免疫力の低下が発症の原因となることがあり、50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が帯状疱疹を発症すると言われています。
また、糖尿病やガンなどの病気で免疫力が低下する事により発症する事もあります。
神経が損傷されることで、皮膚の症状が治った後も痛みが残ることがあり、3か月以上痛みが続くものを帯状疱疹後神経痛と呼びます。
この症状は、「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛みが特徴です。
帯状疱疹後神経痛になりやすい因子として、年齢(高齢者に多い)、痛みが強い、皮膚症状が重症である、などがあります。
50歳以上で帯状疱疹を発症した人のうち、約2割の人にこの症状が出るといわれています。
また、帯状疱疹は頭部から顔面に症状が現れることもあり、目の症状として角膜炎や結膜炎、ぶどう膜炎などの合併症を引き起こすことがあります。
重症化すると視力低下や失明に至ることもあります。
その他の合併症として、顔面神経麻痺や耳介の帯状疱疹を特徴とする「ラムゼイ・ハント症候群」と呼ばれるものがあります。
耳の神経への影響から、耳鳴り、難聴、めまいなどを生じます。
このように、帯状疱疹はさまざまな合併症を引き起こすことが知られていますが、できるだけ早く治療を行うことによって改善できる合併症もありますので、早めの受診が大切です。
帯状疱疹は、加齢や疲労などによる免疫力の低下に伴い、誰でも発症する可能性のある病気です。
帯状疱疹になりにくい体づくりのためには、食事のバランスに気をつける 、睡眠をきちんと取るなど、日頃から体調管理を心がけることが大切です。
50歳以上の方は、ワクチン接種で予防することができます。
帯状疱疹ワクチンには、不活化ワクチンと生ワクチンがあります。
生ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の毒性を弱めて製造されています。
不活化ワクチンは、病原体となるウイルスや細菌の感染力を失活、もしくは病原体を構成する物質をもとにして製造されています。
帯状疱疹に対しては、抗ウイルス薬による薬物治療が行われます。
皮疹が現れたら、できるだけ早く抗ウイルス薬を服用し、症状の緩和や合併症の軽減を目指すことが大切です。
皮疹出現から3日以内に治療を開始するのが理想です。
重症の場合には入院して抗ウイルス薬を点滴することもあります。
痛みに対しては、NSAIDsという名前で分類される鎮痛薬が使用されます。
ロキソニンやボルタレンなどがそれにあたり、市販薬もあります。
しかし帯状疱疹の痛みは神経の痛みも混じる為、十分に痛みが取れない場合は病院で処方される薬剤が必要になります。
漢方薬も使用されたりします。
ウイルスが増殖し、皮疹がまさに広がっている急性期には、水分の代謝を整え、炎症を抑えるような漢方薬として五苓散(ゴレイサン)や黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)などが使用されます。
慢性化し、後述する帯状疱疹後神経痛を発症した場合には血流の改善や自律神経活動の改善を目的に、麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)や桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などが用いられます。
漢方薬はその人の状態に合わせて使い分けたり組み合わせたりしますので、漢方を取り扱う医師、薬剤師に相談すると良いでしょう。
帯状疱疹後神経痛が生じてしまった場合には、薬物療法、局所療法などのさまざまな治療法を組み合わせて症状の改善を目指します。
薬物療法では、従来から使用されてきた抗うつ薬やワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液に加え、近年では神経伝達物質の放出を抑制し鎮痛効果を発揮する「プレガバリン」や「ミロガバリン」、弱オピオイドの「トラマドール」などが登場し、治療の選択肢が広がってきています。
帯状疱疹後神経痛の治療は長期間を要することが多く、一筋縄ではいかないこともあります。
薬の他には神経ブロック療法が行われます。
神経ブロックは局所麻酔薬によって一時的に痛みをブロックする方法です。
1回のブロックでは一時的に痛みを抑えることができるだけですが、何回も神経ブロックを行うことで痛みの刺激に対して敏感になっている神経を休め、慢性的な痛みを軽減させることができます。
また、血流が良くなることにより神経の修復を促す効果もあります。
普段から適度な運動、バランスの良い食事、質のよい睡眠、快便、などを心掛け、免疫力が下がらないように出来れば、帯状疱疹になりにくい体つくりが出来るでしょう。
帯状疱疹を発症した場合は、疑った時点で速やかに皮膚科を受診するようにしましょう。
発症後なるべく早い時点で抗ウイルス薬の内服を開始することが症状の軽減ならびに後遺症の予防につながります。
帯状疱疹後神経痛を疑う症状が継続する場合も、迷ったらまず皮膚科を受診するとよいでしょう。
速やかに皮膚科を受診すれば対処も早くなりますし、内服薬程度で収まる痛みであれば皮膚科だけで対応できる場合もあります。
また50歳以上の方でワクチンを接種できる方にはそれをお勧めします。
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