- よもやま話
皆さん、硬いものを食べた時、「歯に痛みを感じるようになった」、「歯磨きで出血した」などの経験をしたことがありませんか?
普段は痛みを感じていないので、痛みが出るまで様子を見ていても大丈夫ではないか・・・といった油断は禁物です。もしかしたら、すでに歯周病の諸症状が現れているかもしれません。今回は、放置すると恐ろしい歯周病と今日からできる予防についてお伝えしていきます。
人の口腔内には虫歯菌、歯周病菌、口臭菌、ねばつき菌など約400~700種類の細菌が存在し、歯垢(しこう)1gあたり約1000億個の細菌がいると言われています。歯垢とは、歯に付着した細菌が繁殖した固まりです。これらの細菌は普段は人体に影響を与えません。しかし、不十分な歯磨きなどにより、歯と歯ぐきの間に細菌の集まりである歯垢ができると、細菌が繁殖し、歯ぐきに炎症が起こります。
「歯周病」ってよく聞くけど、どんな病気なの?自分は歯周病なのかな?と疑問を持つ方も多くいると思います。
歯周病は痛みなどの自覚症状が出にくく、知らない間に症状が悪化してしまう恐ろしい病気なのです。
歯周病の初期症状は、歯垢と呼ばれる細菌の感染によって歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きをしている時に出血する歯肉炎の症状が多いですが、口臭や歯にこびりついた歯石なども歯周病に含まれます。進行すると噛むと痛い、歯ぐきが下がるなど歯周炎の状態や歯を支えているアゴの骨(歯槽骨)が溶かされて抜歯しなければならない場合もあります。
歯垢は歯磨きが不十分な部分に付着するネバネバした黄白色の粘着物です。歯垢は時間とともに量が多くなり、酸素が少ない状態になると歯垢の中で酸素を嫌う嫌気性菌が多くなります。嫌気性菌が歯肉に攻撃を仕掛けて身体の中に侵入しようとし、身体は菌の侵入を抑えようとします。これが歯周病の始まりです。
2021年に厚生労働省が行った歯科疾患実態調査によれば30代後半になると約70%の人が歯ぐきの腫れや出血するなど歯周病の症状を経験した調査結果が出ています。歯周病は年齢に関係ない身近な病気の一つなのです。
歯周病が原因となる出血を放置しておくと、歯垢は歯周ポケットの中に潜り込み、どんどん歯周組織を破壊していき炎症を繰り返します。炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の出血から全身に入り、さまざまな病気を引き起こす原因となります。炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせる糖尿病、早産、低体重児出産、肥満、心筋梗塞、脳梗塞にも関与しています。また歯周病菌の中には誤嚥(ごえん)により気管支から肺に辿り着くものがあり、高齢者の死亡原因で高い誤嚥性肺炎になることもあります。
・不十分な歯磨き
・甘いものをよく食べる
・喫煙
・ストレス
・不規則な生活
・義歯が合っていない
などがあります。
下記に当てはまる項目が一つでもあったら大丈夫だろうと過信せず、まずは歯科医院で受診することをおすすめします。
□歯ぐきの色が充血したような赤色になっている。
□歯と歯の間の歯ぐきが腫れている。
□歯磨きしている時に出血する。または歯ブラシに血が付着する。
□歯間ブラシやフロスをすると嫌な匂いがする。
□食べ物が歯と歯ぐきの間または歯と歯の間に挟まることがよくある。
□歯ぐきが下がってきている。
□歯がぐらぐらしている。
□歯応えのあるものが食べにくい。
□歯がしみる。
1. 正しい歯磨き
方法
①1~2本の歯を小刻みに歯ブラシで動かしながら20~30回往復させて歯の汚れを取り除く。
②歯ブラシを歯に当てた時、毛先が開かない程度の優しい力で磨きましょう。力を入れることで歯や歯ぐきを傷つけます。
③磨き残しをしないため、下の奥歯の内側や上の奥歯の外側から磨き始めることをおすすめします。
④毛先が開いた歯ブラシは使用を中止する。目安は1ヶ月に1回程度の交換で歯垢を落としやすくするためある程度、硬さのある歯ブラシがおすすめです。
2. 生活習慣
禁煙、節酒、バランスの良い食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。
3. 定期的な歯科検診
歯の状態を把握しておくことは歯周病の予防になります。見た目に異常がなくても歯周病を発症していることがあるので、進行する前に歯科医師に診てもらうとよいでしょう。歯垢が硬くなって歯石と呼ばれる状態になると自分で除去することは難しくなります。そのため、定期的な歯の受診をおすすめします。
歯周病は進行する恐ろしい病気です。誰もが歯周病になる要素を持っています。お口の中に少し意識を傾けて正しい歯磨き、歯科検診で歯石の除去をすることで虫歯や歯周疾患の予防または早期にお口のトラブルを発見することができます。
歯には歯ざわり、味覚、正しい発音をサポート、表情を豊かにする、瞬発力を生み出すなどの役割があります。今日から効果的なケアを毎日の習慣にしていきましょう。