- よもやま話
肺は、身体にとって無くてはならない重要な器官の一つです。
ここでは、肺の仕組みや、働き、病気の種類などを紹介します。
肺は、呼吸で取り込んだ酸素と二酸化炭素の交換(ガス交換)をしています。
吸い込まれた酸素は気管、気管支を通って、肺胞[はいほう]とよばれる小さな袋にたどり着きます。
ガス交換が行われているのは、肺胞の内側の実質[じっしつ]とよばれる部分です。
また、実質の外側にある壁のような部分は間質[かんしつ]とよばれています。間質は、酸素や二酸化炭素の通り道になっており、この間質を通って実質と血液との間でガス交換が行われます。
また、人間や動物は生きるために必要なエネルギーを、毎日の食事から吸収し、作り出しています。 食べ物は、口、胃、腸〈十二指腸、小腸、大腸〉を通っている間に、消化液などによって分解され、 体に吸収しやすい養分に変わります。この養分のうちブドウ糖という栄養が、エネルギーの主なもとになります。体の中で、このブドウ糖などの栄養と、呼吸で取り入れた酸素が結びつくと、エネルギーが生まれます。
そして、酸素が使われエネルギーが生まれたあとには二酸化炭素ができます。二酸化炭素は、体内にあると有害なため、肺から呼吸により体の外に吐(は)き出されます。
私達の体は、体外から酸素を取り込み、体を動かすためのエネルギーを作り出し、細胞活動によって産生された二酸化炭素を体外に排出しています。その回数は、成人で15~17回/分、新生児で40~50回/分とされています。
よく呼吸のことを「肺を膨らませる」と表現するのを目にしますが、我々の肺は自分自身を膨らませることはできません。どうやって膨らませているのかというと、肺が収まっている胸郭を広げることによって肺を膨らませています。
横隔膜が下に下がることによって、胸郭内の容量が増え、それにより内圧が下がるため体外から空気が肺へ入ってきます(吸気)。この状態から、横隔膜が元の位置に戻ることで内圧も上がるため肺の中の空気が押し出されます(呼気)。これが呼吸運動の仕組みになります。
一言に肺と言っても、当然細分化がされています。
ここでは、肺の中や肺にまつわる器官を調べていきましょう。
■気管・気管支
呼吸によって鼻や口から吸いこんだ空気は,気管を通って肺に送られます。 気管は,のどぼとけあたりから下にのびる空気の通り道です。 管の内側には細かい毛が生えていて,ほこりなどをとりおさえます。 直径は1.5cmほどで,のどぼとけから10cmくらい下で左右2つの気管支に枝分かれして肺に入っています。
■上葉
右、左の肺の上の部分を言います。
■中葉
右の肺のみにある、肺の中間あたりを言います。
※左の肺は心臓がある為、中葉は無い。
■下葉
右・左の肺の下の部分を言います。
■肺胞
肺胞は毛細血管が網目(あみめ)のようになっています。 全身をめぐった血液は、肺胞の袋に二酸化炭素をはき出します。 同時に、肺胞の中の酸素が血液のなかに取りこまれます。 肺胞は肺に約3億から6億個あるといわれています。
■肺胞道・肺胞嚢
細気管支1本から、数本の肺胞道が分岐しています。肺胞道の先端は袋状になっており、袋状の部分に数個の小部屋のような構造物があります。この袋状の部分が肺胞嚢であり、小部屋の部分が肺胞です。
■肺動脈
肺動脈は、心臓の右心室から肺へ血液を送り出す動脈であり、静脈血(脱酸素化された血液)を運ぶ唯一の動脈です。
人間の心臓の場合、肺動脈は右心室の肺動脈弁から始まり、比較的太く短い肺動脈幹(長さ5cm、直径3cm程度)を経たのち、2つの肺動脈(左肺動脈、右肺動脈)に分岐して、それぞれ左右の肺に静脈血を運びます。
■肺静脈
酸素の少ない血液を心臓(右心室)から肺胞に送るのが肺動脈であり、肺胞で酸素を取り入れた血液を心臓(左心房)に戻すのが肺静脈です。
肺の病気全てはご紹介できませんが、ここでは特に皆さんの身近である病気を紹介していきます。
【空気の通り道「気管・気管支」の病気】
呼吸にかかわる臓器を総称して呼吸器といいます。このうち空気が通過する器官が気道で、鼻腔、口腔から咽頭、喉頭を経て気管、気管支、細気管支までを指します。気管や気管支に起こるおもな病気には、次のようなものがあります。
慢性気管支炎
気管支の粘膜に慢性の炎症が起こっているものをいいます。原因不明の咳や痰が一定期間、少なくとも3ヵ月続き、その状態が連続して2年以上続く場合は、慢性気管支炎と診断されます。
気管支拡張症
気管支が広がってもとに戻らなくなる病気で、気管支の広がった部分には分泌物がたまりやすく、細菌の温床となるため、感染をくり返します。
気管支ぜんそく
気管支がアレルギーなどによる炎症によって過敏になる病気で、何らかの刺激で気道が狭くなり、喘鳴(ぜんめい)や咳などが出て呼吸が苦しくなる発作をくり返します。
【呼吸の要「肺」の病気】
肺胞など肺本体に起こる病気を紹介します。
肺炎
細菌やウイルスなどの病原体の感染によって肺が炎症を起こす病気で、かぜやインフルエンザなどがこじれて起こる場合や、高齢者などでは食べ物や飲み物が誤って気道に入ったり、胃の内容物が逆流したりして起こる場合もあります。
肺結核
結核菌の感染によって肺に炎症が起こる病気をいいます。結核菌は空気感染あるいは飛沫感染するため、結核菌が漂う空気を吸い込むことでも感染します。
肺気腫
肺胞の弾力性が低下した状態をいい、ガス交換が十分に行われなくなるため、息切れや呼吸困難が起こるようになります。
間質性肺炎
肺の間質に炎症が起こる病気で、肺胞のやわらかい壁の構造が壊され、硬い組織が増える線維化が進みます。これを「肺線維症」といい、線維化した肺胞は硬く縮んでいくため呼吸ができなくなって、死に至ることもあります。
肺がん
肺がんは、肺の気管、気管支、肺胞の一部の細胞がなんらかの原因でがん化したものです。進行するにつれてまわりの組織を破壊しながら増殖し、血液やリンパの流れにのって転移することもあります。転移しやすい場所はリンパ節、反対側の肺、骨、脳、肝臓、副腎です
【肺を保護する「胸膜」の病気】
肺の表面は胸膜というなめらかな膜で覆われています。また、肺と、肺が入っている肋骨に囲まれた壁(胸壁)の間のすき間は胸膜腔とよばれ、通常は少量の水(胸水)が入っており、肺と胸壁がこすれ合わないよう潤滑剤の役目をしています。おもな胸膜疾患は次の2つです。
胸膜炎
胸膜に炎症が起こる病気をいいます。多くが胸膜にある血管から血液中の水分などがもれ出して、胸水がたまります。炎症を起こす原因としては細菌感染などで、細菌感染は多くが肺炎に続いて起こります。
気胸
胸膜に穴が開き、肺のなかの空気が胸膜腔にもれてたまった状態をいいます。胸膜腔に空気が入って内圧が高まると、肺は収縮して換気量が減り、息切れや呼吸困難などが起こります。
【肺の生活習慣病といわれる「慢性閉塞性肺疾患(COPD)】
近年、「肺の生活習慣病」として注目されている病気が「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」です。COPDとは、これまで「慢性気管支炎」や「肺気腫」とよばれていた病気の総称で、たばこの煙などに含まれる有害物質を吸い込むことで、肺や気管支が障害を受ける病気をいいます。
長年、たばこの煙を吸い続けると、気管支や肺胞に慢性的な炎症が起こります。気管支は炎症のため狭くなり、肺胞は破壊されて酸素を取り込みにくくなります。
COPDの症状は咳や痰で、長い時間をかけて進行するのが特徴です。進行すると、ひどい息切れによって日常生活にも支障を来すようになり、最悪の場合は死に至るケースもあります。
肺の病気に対して、日頃対策できることをご紹介していきます。
【マスクや手洗い・うがい】
外出時にはマスクをして、細菌やウイルスを体の中に入れない。外から帰ったら、手洗いとうがいをして、細菌やウイルスを洗い流す。
とても簡単な方法ではありますが、これを日々続けることが、一番有効な方法です。外気中に浮遊している細菌やウイルスは、そのままにしていると口や目、鼻からのどを通り、肺に侵入します。ですから、帰宅したら一刻も早く水で洗い流すことが大切になるのです。
【禁煙】
タバコを吸う習慣のある人は、禁煙することが一番の効果的な方法かもしれません。タバコの煙を吸い込むことによって、肺の中は常に軽く炎症を起こしている状態です。この状態が長く続くほど、肺全般の病気を起こしやすくなります。
【十分な食事と休養+運動で基礎体力をつける】
体の中に、病原微生物が入り込んでも、感染を起こす前に排除出来れば予防することできます。しかし、偏った食生活や、ストレス・過労などによる疲れが続くと、この「感染を起こす前に病原微生物を排除する」という、本来の人の体に備わった力が、充分に発揮できません。
高齢になると、食事だけで十分な栄養を取ることも難しくなるため、普段から意識して、肉・魚・野菜などをバランスよく食べる習慣をつけておきましょう。
『肺』は生きる為に必要な呼吸の要になる器官の一つです。
充分な知識を持って、日頃出来ることを意識し、健康な明日を迎えるようにしましょう!