- よもやま話
脳卒中は、正式には脳血管障害と呼ばれ、日本人の三大死因のひとつとして知られています。今回はそんな恐ろしい脳卒中についてお話したいと思います。
脳卒中は、脳の血管が破れる脳出血と、脳の血管が詰まる脳梗塞の2つに分けられます。
脳出血には、脳内出血とくも膜下出血があります。脳内出血は、ある日突然発症することが多く、脳内の細小動脈が破れて出血が起こっている状態です。中には、頭痛や吐き気の症状などの前兆が現れる場合もあります。
一方、くも膜下出血は、脳動脈瘤が破裂した状態で、ものが二重に見えたり、激しい頭痛の初期症状が現れます。
脳梗塞は、動脈硬化によって血管が狭くなり、最終的に閉塞する脳血栓と、血液の塊によって突発的に血管が詰まる脳塞栓の2つがあります。
脳梗塞の発作の前兆として、半身が痺れる、手に持っているものをするっと落としてしまう、言葉が出てこない、ろれつが回らないなどの症状があります。
脳卒中の初期症状が軽度である場合は、たいしたことがないと放置しやすい傾向があります。早い段階で適切な治療をしないと症状が悪化してしまうので注意が必要です。いつもと違う頭痛があるなど、気になる症状がある場合は早めに受診してください。
脳卒中は、早期発見が非常に大切です。一般の病院で頭痛時に診察を受け異常なしと診断された場合でも、専門医療機関を受診した場合、別の診断結果が出ることがよくありますので、少しでも不安がある方は、専門の医療機関の受診をお勧めします。
脳梗塞や脳出血、くも膜下出血のことを指す脳卒中。主な原因は高血圧や脂質異常症などによって起こる動脈硬化です。
ほかに、季節や時間帯も脳卒中のリスクを高める要因として知られています。
脳卒中の種類によって発症しやすいタイミングが異なるため、どういうときに起こりやすいのかを知り、できるだけ予防することが大切です。
【脳梗塞】
6~8月の夏頃は、脳梗塞が起こりやすい季節です。脳梗塞は血管が狭まったりドロドロになって詰まったりすることで起こります。
そのため、汗を大量にかくことで体内の水分量が低下しやすい夏場に起こりやすくなります。
とくに起床してから2時間以内と、睡眠中は脳梗塞が起こりやすいタイミングです。
起きてすぐは血圧が急激に上がりやすく、睡眠中は脱水を起こして血管の中を流れる血液がドロドロになりやすいことが関係しています。
【脳出血】
脳出血は冬に起こりやすいことが特徴です。冬場は体温を上げるために血管が収縮し、血圧が上がりやすくなっています。
冬場でもとくに起床後は急激に血圧が上がりやすいため、脳出血のリスクが高まっている状態です。また、夕方は精神的にも身体的にも緊張が高まるため、血管が収縮しやすくなります。
ただし高齢者の場合は、冬場に限った話ではありません。
高齢者は体温を調節する機能が低下するため脱水症状になりやすく、血液が詰まって血栓ができやすい状態です。
そのため高齢者は、冬場だけでなく年間を通して脳出血には注意しなければいけません。
【くも膜下出血】
くも膜下出血は冬場に発症しやすくなります。とくに午前6時から12時の間が発症しやすい時間帯です。冬場は体が熱を生み出そうと血管を収縮させているため、血圧が上がりやすくなります。
起床後は血圧が急激に上がりやすく、血管や心臓への負担が大きくなりやすいことも要因です。
もともと血圧が高めの方、糖尿病や脂質異常症などの持病がある方は冬場の午前中がくも膜下出血を起こしやすいタイミングとなるため注意しましょう。
・片目が見えなくなってきた
・ものが二重に見える
・片側の顔が歪んでいる
・片方の顔面や手足が動かない
・しびれがひどい
・言葉が出てこないことがある
・人の話が理解できなくなってきた
・ろれつが回らない
・「イー」と言うと、片側の顔が歪む
・両手を上げると片方の手が落ちてしまう
・「今日は天気が良い」とはっきりと言えない
上記以外にも、意識障害、半身麻痺、半身しびれ、呂律不良(脳梗塞、脳出血)、嘔吐を伴う突然の激しい頭痛(くも膜下出血)などがある場合は、すぐに救急車を要請してください。
この様な場合は救急病院や脳卒中センターでの緊急治療が必要な状態です。症状が治まったとしても、大きな脳梗塞発作の前触れである一過性脳虚血発作(TIA)の可能性があります。
速やかに救急病院や脳卒中センターを受診してください。
寝たきりとなる原因の第1位(36.6%)は脳卒中。脳卒中は寝たきりの最大の要因を占めています。それ以外の要因として、高齢による衰弱(13.5%)、骨折・転倒(11.8%)、認知症(9.0%)等が続きます。厚生労働省の2002年の報告では、全国に約35万6000人の寝たきりの方がおられ、そのうち約13万人の方が、脳卒中が原因という報告があります。
再発を繰り返すうち寝たきりになる「脳卒中」
特に脳卒中の中でも脳梗塞は、はじめは軽症であっても何度も再発を繰り返しながら後遺症が重くなっていく病気です。一旦脳梗塞を起こすと、ほぼ完治する人は約20%で、73%の方は何らかの後遺症を残し、死亡する人は7%と報告されています。
「最悪の場合は死を招く場合もありますが、血管の損傷によって血液の流れが止まってしまった箇所がどの部位なのかによって、引き起こされる障害は違ってきます。
損傷部位 | 損傷により引き起こされる障害 |
前大脳動脈 | 下肢の運動麻痺、無動性無言症(意識はあるが、自発性がなく、魂が抜けたかのようにボーっとしている状態) |
中大脳動脈 | 顔面・上肢に強い運動麻痺、左側の場合は失語症(言葉を話すことや言葉の理解ができなくなる状態) |
後大脳動脈 | 反対側の同名半盲(両目の半分が見えなくなる)、反対側の感覚性麻痺。
脳底動脈閉塞のレベルによって症状が異なります。
1) 全盲、重度記憶障害、失読(文字を読むことが困難になる
2) 同側顔面の麻痺と反対側四肢麻痺、眼球運動麻痺、舌麻痺
3) 閉じ込め症候群(四肢麻痺・無言により、意思の疎通が瞬きと眼 球運動でしかできない状態) |
椎骨動脈 | 小脳性失調(体のバランスがとりにくくなる、ふらつきによる夜行困難、呂律がまわらない、嘔気・嘔吐)、同側顔面と対側半身の感覚障害。 |
眼動脈 | 失明、一時的な眼動脈の閉塞で片目が突然見えなくなり、しばらくしてゆっくりと改善することもあります。 これは、専門用語で”一過性黒内障”といい、重症の脳梗塞の前兆です。 |
脳卒中を引き起こす主な原因は動脈硬化です。 その動脈硬化を招く要因としては、高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙などが挙げられます。 つまり、脳卒中は生活習慣病が要因となっているのです。 脳ドックで早期発見し、普段の生活を見直せば、脳卒中は予防することができます。
脳卒中は予防することができる病気です。
脳卒中の主な原因は動脈硬化ですが、その要因は高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙などです。ということは、脳卒中は生活習慣病を予防することで防げるのです。
そのためには、脳ドックで早期発見を心がけることと、普段の生活習慣を見直すことがポイントです。
・30代になったら自分の血圧を把握し、コントロールすることを心がける。
・塩分控えめの食生活を送り、コレステロールを減らす。
・仕事を離れてリラックスできる趣味を持ち、適度な運動を習慣化する。
・40歳を過ぎたら定期的に脳ドックを受診し、脳の健康状態をきちんと把握する。
脳卒中は、高血圧などの生活習慣病を予防することが治療につながります。いま一度、ご自身の生活習慣について意識し、定期的な通院や検査で脳卒中予防に努めましょう。