- よもやま話
「なんだか体が重だるい」「朝起きた時から顔がむくんでいる」……そんな声に混じって、最近特に増えているのが「食後にお腹がパンパンに張って苦しい」というお悩みです。「単なる食べ過ぎかな?」「それとも便秘?」と思うかもしれませんが、もしあなたが食後すぐに妊婦さんのようにお腹が膨らんだり、四六時中ガスが溜まっているような感覚があるなら、それは単なる体調不良ではなく、SIBO(小腸内細菌異常増殖症)という状態かもしれません。
東洋医学が伝える「夏の養生」と、最新の腸内環境の考え方である「SIBO」を掛け合わせ、この梅雨時期を軽やかに乗り切るための方法をたっぷりと綴っていきます。
最近、健康に関心の高い方の間でさかんに耳にするようになった「SIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth)」。日本語では「小腸内細菌異常増殖症」と訳されます。
私たちの腸内には100兆個もの細菌が住んでいますが、その9割以上は「大腸」にいるのが本来の姿です。小腸は食べ物の栄養を吸収する場所なので、細菌は本来とても少ないはずなのです。
ところが、何らかの原因で「大腸にいるはずの細菌が小腸へ逆流」したり、「小腸内で爆発的に増えて」しまったりすることがあります。 これがSIBOです。小腸に菌が増えると、食べたもの(特に糖質)をエサにして、菌が小腸の中で大量のガスを発生させます。小腸は大腸に比べて細く、ガスを溜め込むようにはできていません。
そのため、少しのガスでもお腹がパンパンに張り、痛みや不快感を引き起こしてしまうのです。
ここで、東洋医学の視点を重ねてみましょう。東洋医学では、「湿邪(しつじゃ)」と呼びます。文字通り、湿気の邪気です。湿邪には「重く停滞する」という性質があります。
これが体に侵入すると、私たちの消化システムを司る「脾(ひ)」を直撃します。「脾」はいわば体の湿気取りのような役割も担っていますが、外の湿気が多すぎると処理が追いつかなくなり、ダウンしてしまうのです。
「脾」が弱ると、消化管全体の動きが目に見えて悪くなります。ここで西洋医学のSIBOとリンクします。
SIBOの最大の原因は、小腸の「お掃除機能(MMC:空腹時強収縮)」の低下だと言われています。お腹が空いている時に「グ〜ッ」と鳴るのは、小腸が細菌や食べカスを大腸へ押し流している掃除の音。
湿気によって「脾」が弱り、消化管の動きが停滞すると、このお掃除がストップしてしまいます。すると、小腸に残った食べカスをエサにして細菌がどんどん増殖し、SIBOが悪化するというわけです。
つまり、「湿気」「脾のダウン」「腸のお掃除ストップ」「SIBO(お腹の張り)の悪化」という負のループが出来上がってしまうのです。
ここで一つ、重要な注意点があります。「お腹の調子が悪いから、発酵食品をたくさん食べよう!」
そう思って、毎日ヨーグルトや納豆、キムチ、甘酒を熱心に摂っていませんか?実は、酵食品や食物繊維(特に高FODMAPと呼ばれるもの)は、大腸の善玉菌には良いエサになりますが、小腸に菌が溜まっている状態では、その菌たちの絶好のエサにもなってしまいます。
結果として、健康のために食べているものでさらにガスが発生し、お腹が張ってしまうという皮肉な結果を招くのです。この6月にお腹の張りが気になる方は、一度「足し算の腸活」を休み、腸を休ませる「引き算の養生」にシフトすると良いです
では、具体的にどのような食事を心がければ良いのでしょうか。「脾」を助け、小腸を休ませるためのポイントをまとめました。
① 「湿」を逃がす食材を味方につける
体内に溜まった余分な水分を外に出す手助けをしましょう。
ハトムギ: 煮出してお茶として飲むのも良いですし、ご飯と一緒に炊くのもおすすめです。水分代謝を促し、胃腸を整えます。
冬瓜やキュウリ: 湿気による体の熱を取り除きます。ただし、冷やしすぎないよう、温かいスープにするなどの工夫をする。
② 胃腸の掃除時間を確保する
SIBO対策で最も大切なのは、実は「何を食べないか」よりも「いつ食べないか」かもしれません。小腸のお掃除機能(MMC)は、空腹の状態が90分以上続いて初めて始動します。
ついつい飴を食べたり、甘い飲み物をちょこちょこ飲んだりしていませんか?間食を控え、食事と食事の間を4時間〜5時間ほど空けることで、腸が自分自身を掃除する時間をプレゼントしてあげましょう。
③ 「温め」の力で「脾」を動かす
夏は蒸し暑いため、冷たい麺類やアイスクリームが恋しくなります。しかし、冷えは「脾」の天敵。胃腸が冷えると、動きはさらに鈍くなります。
生姜(ショウガ): ジンゲロールという成分が胃腸を温め、殺菌効果も期待できます。
山椒(サンショウ): 漢方では「大建中湯(だいけんちゅうとう)」という、お腹の張りに効く薬にも配合されています。お腹の冷えを取り、腸の動きを活発にします。
食事以外でできる夏の養生アクションをお伝えします。「除湿」を徹底する: 体の中の湿気を取るには、まず外の環境から。湿度が60%を超えると湿邪の影響を受けやすくなります。
除湿機を賢く使いましょう。お風呂でじんわり汗をかく: 湿気で出口を失った水分を、汗として外に出してあげます。
ただし、激しい運動で息を切らすより、半身浴などで「じんわり」かく方が、自律神経が整いやすく腸にも優しいです。足元を冷やさない: 「脾」に繋がる経絡は足にあります。
夏場でも靴下を履く、あるいは寝る時だけでもレッグウォーマーをするだけで、お腹の張りやすさが変わることもあります。
夏という季節は、自分の内側と向き合うのに適した時期でもあります。温かいお茶を飲み、自分のお腹の状態はどうかな?と意識を向けてみてください。
お腹の張りやガスは、単なる不快な症状ではなく、体からの「もう少しゆっくり休んで」「食べ過ぎを控えて」という大切なメッセージです。
今回ご紹介したSIBOの知識と、古くから伝わる東洋医学の養生法をバランスよく取り入れて、湿気の多い暑い夏を爽快な気分で通り抜けていきましょう。あなたのお腹が、明日もっと軽やかになりますように。