- よもやま話
筋肉の疾患があるのをご存じですか?有名なのは「筋ジストロフィー」で、皆さまにも聞き覚えがあるかも知れません。しかし、その「筋ジストロフィー」も、これからお伝えする疾患「ミオパチー」の一種なのです。今回は「ミオパチー」について知っていきましょう。
ミオパチーは筋肉がうまく動かない、筋力が低下するなど、筋肉に異常が生じることで引き起こされる疾患の総称をいいます。
また、ミオパチーには遺伝性と後天性があり、先天性ミオパチーは生まれつき筋肉に異常を持った疾患の総称です。
現在日本では1000人~3000人の患者がいると考えられています。10万人に3.5~5人が発症する稀な疾患で、指定難病とされています。
発症が発見されるのはさまざまで、乳幼児から診断される場合や大人になってから診断されることもあるようです。
①生後・幼少期…ふにゃふにゃしている、筋力がない、発達の遅れ
②呼吸器系…呼吸不全、淡を出しにくい
③心機能…心臓の収縮機能の低下、不整脈など心臓の合併症
④栄養面…食欲低下、体重減少
⑤関節の変化…関節が固くなる、側彎症(そくわんしょう…背骨が左右に弓のように曲がる状態)
⑥顔の変化…まぶたが下がる、眼球が動きにくい
⑦その他…知的障害、てんかん
おおまかにミオパチーの症状についてまとめてみました。
では以下では、ミオパチーの種類とその特徴を見てみましょう。
冒頭で筋ジストロフィーはミオパチーの一種と触れ込みましたが、実は理論上すべての筋疾患をミオパチーというのです。
代表的な遺伝性ミオパチーは
・先天性ミオパチー
・代謝性ミオパチー
・筋ジストロフィー
・ミトコンドリアミオパチー
・筋原線維性ミオパチー
などがあります。しゃがみ立ちや階段の昇りが困難なことから症状に気付くことが多いようです。
後天性ミオパチーの代表は
・炎症性ミオパチー
・内分泌性ミオパチー
・薬剤性ミオパチー
などです。遺伝性ミオパチーと比べて、経過が短いことが多いのが特徴のようです。
・先天性ミオパチー
主に乳児期~小児期に発症する。顔面筋がやられることが多い。全身の筋肉が痩せており、筋肉自体が弱い
・代謝性ミオパチー
運動時や感冒などをきっかけとして、筋力低下や筋肉の痛みを発症。発作時に骨格筋が壊れ、「ミオグロビン」と呼ばれる物質が血中へ流れ出し、尿として出る
・筋ジストロフィー
遺伝子変異によって筋肉に必要なたんぱく質がうまく作られず、筋肉が弱くなっていく。筋ジストロフィー自体にも数多くのタイプが存在し、一番多い「デュシェンヌ型」は約40%が突然変異によって発症するといわれている。
・ミトコンドリアミオパチー
エネルギー産生に重要なミトコンドリアでのATP産生が出来ず、エネルギーを特に使う脳がダメージを受け、さまざまな障害に繋がってしまうことも。まぶたが下がり、目が動きにくくなる麻痺性の病型、脳卒中に繋がる病型(メラス)、ミオクローヌスてんかんを伴う病型(マーフ)などがある。糖尿病や難聴に合併する恐れがある
・筋原線維性ミオパチー
主に成人期に発症する。徐々に手足の筋肉が弱くなり、筋委縮が進行する。また、筋力低下ではなく呼吸不全が発症することも稀にある
・遠位型ミオパチー
ミオパチーの多くは「近位筋(体の中心近くの筋)」に見られるが、遠位型ミオパチーは、体の中心から遠い「遠位筋」に発症し、例えば、足首を動かす筋肉や指先を動かす筋肉に対し、その姿を表す。発症から10年ほどで車いす生活を余儀なくされるなど、体の自由を奪っていく。原因としては、神経の損傷が主で、栄養不足によって発症するケースも挙げられている。「縁取り空砲を伴う遠位型ミオパチー」「三好型ミオパチー」「眼咽頭遠位型ミオパチー」の3種類が存在する
・炎症性ミオパチー
通称「筋炎」。筋肉の炎症。自己免疫疾患から来るものといわれている。数週間から数ヶ月にわたり近位筋を中心とする筋力低下が進む。大腿四頭筋(大腿前面の筋)と手の指を曲げる筋になることが多く、階段の昇り、椅子からの立ち上がり、ペットボトルの蓋を開けにくいといった症状に見舞われる
・内分泌性ミオパチー
主に、甲状腺機能低下症に伴って発症する。甲状腺機能低下症があると、近位筋を中心とする筋力低下+筋肉の疲れが増すといった症状が起こる
・薬剤性ミオパチー
コレステロール値を低下させる「スタチン製剤」によって筋障害が起こる。筋痛が主だが、稀に筋線維が破壊されることもある。ほかにも、副腎皮質ステロイド製剤によって、近位筋の萎縮、大腿部や上腕部の筋肉が痩せて力が入らなくなることも(ステロイドミオパチー)
上の一覧を見ていただくと分かる通り、原因は種類によってそれぞれ異なります。炎症性ミオパチーは、文字通り筋肉に炎症が起こることが原因で発症します。それ以外でも細菌感染や自己免疫疾患などによって発症することがあります。
甲状腺機能低下症によって発症するものもあれば、ステロイド治療によって引き起こされる場合も報告されています。
また、家族や近親者などの病歴的に発症したことがなくても、突発的に患ってしまう可能性があるのがこのミオパチーの怖いところではないでしょうか。
治療法として、病気の種類や状況によって大きく異なってきます。
例えば、筋力・筋緊張低下、関節拘縮、側彎症の脊柱変形に対しての治療法はリハビリテーション、装具、手術療法が行われます。
呼吸障害に対しては、人工呼吸器を導入、呼吸を出しやすくするための呼吸リハビリテーションも有効です。
しかし、治療はそれぞれの病気への対処療法に過ぎなく、残念ながら根本的な治療法はいまだに見つかっていません。
根本的な治療が見つからない以上、早期発見がミオパチーへの鍵となります。
血液中のクレアチニンキナーゼ(CK)の上昇チェック、脳神経内科による診察、筋肉の電気を調べる筋電図が主な診察です。
自己免疫が原因となっている場合は、ステロイドや免疫抑制剤などで炎症を抑えていきます。
今回は指定難病とされているミオパチーをピックアップしました。
ミオパチーのように、根本治療がなく、私生活を送るのも困難になる疾患は私たちがあまり知らないだけで、実際には数多くあり、今もどこかで苦しんでいる方がいます。
この記事を見てくださっている皆さまが、少しでもこのような疾患や苦しんでいる患者さんを知り、少しでも協力してくれる方が増え、治療法や対策法などの研究が進んでいく未来が近づいてくれば良いな、と思っています。