夢研究会

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夏に起こりやすい脳梗塞

 これから暑さが本番を迎える時期に熱中症とともに夏の時期に起こりやすい脳梗塞(のうこうそく)にも注意が必要です。脳梗塞を引き起こしやすい原因、兆候、予防と対策についてご紹介します。

脳卒中と脳血管障害の違い

 脳には首から太い血管が伸び、さらに太い血管から分かれた細い血管が脳の奥まで張り巡らされ、脳の神経細胞の隅々まで血液が供給されています。脳卒中とは、急性期脳血管障害のことを指し、突然、脳の血管が詰まったり、破れたりして引き起こされる病気の総称です。

 脳卒中は「脳梗塞」、「脳出血」、「クモ膜下出血」の3つのタイプがあります。脳梗塞は脳卒中全体の7割を占めています。

 「脳梗塞」は血のかたまり(血栓)が脳の血管に詰まって脳の神経細胞に十分な血液が供給されないことでさまざまな障害が起こる病気です。特に6月~8月の暑い時期に増加すると言われています。一方で、冬に発症しやすい脳卒中は「脳出血」と「クモ膜下出血」です。脳出血は脳の血管が破れて出血することで障害が引き起こされます。クモ膜下出血は脳の太い血管の分かれ目にできたこぶが破裂し、脳の表面に出血が広がる病気です。冬は体内の熱を放散しないように血管が収縮するので血圧が上昇し、血管が破れやすくなります。

脳卒中の主な原因

 脳卒中を引き起こす主な原因は動脈硬化です。動脈硬化を招く要因として、高血圧症、高脂血症、糖尿病、喫煙、多量飲酒、運動不足、肥満などが挙げられます。脳卒中は生活習慣病が要因となっています。日常の生活習慣を見直すことで予防につながります。

夏に「脳梗塞」の発症が多い理由

 夏は暑さや湿気で大量の汗をかくため、体内が水分不足になりやすいことが原因です。体内の水分が不足すると血液が濃くドロドロの状態になり、血のかたまり(血栓)ができやすくなります。水分不足により体内を循環する血液量も減少し、血液が流れにくくなることで血管が詰まりやすくなります。特に高齢者は脱水症状を感じにくくなっていますので、のどが渇いていなくてもこまめに水分を補強しましょう。

 また、高血圧や糖尿病などの生活習慣病や不整脈といった脳梗塞の危機因子をもった人は、脱水症状が誘因となって、脳梗塞が起こりやすくなるので注意しましょう。

脳梗塞が起こりやすい時間

 特に注意が必要な時間帯は睡眠中と起床後2時間以内です。水分が補給できない睡眠中に汗をかき、脱水状態になったところで起床直後に血圧が上がるために脳梗塞を引き起こしやすくなってしまいます。

意識しておきたい脳梗塞の兆候

こんな兆候が1つでもあったら、すぐに医療機関で受診してください。

□片側の手足に力が入らない。(両腕を水平に上げて、片方が下がるようなら危険)

□体の半分がしびれる。

□顔や唇がしびれる。

□指先が思うように動かない。

□片側の目が見えにくい、物が二重に見える。

□ろれつが回らなくなり、声がうまく出ないと感じる。

□歩き方がふらふらして、障害物がないのにつまづきやすい。

□階段や段差があるところで、片方の足がよく引っかかる。

□痰(たん)が絡んだり、むせることが増えた。

□物忘れが多くなった。

症状がでたらすぐ医療機関で対応を!

 手足や顔のマヒなどの一過性脳虚血(きょけつ)発作の症状が出たら脳梗塞の前触れである可能性があります。脳梗塞は発症から時間が経つほど、半身マヒや言語障害などの後遺症が残りやすくなります。しかし、発症から4時間半以内に血栓を溶かす治療を行うか、8時間以内にカテーテルで詰まった血管を再開通させる手術を行えば、後遺症が軽減する可能性があります。

 脳梗塞は時間との勝負だということを覚えておいてください。

予防と対策

■時間を決めてこまめな水分補給を行う。

 1日に必要な水分量は2.4リットルと言われています。(食べ物の水分も含みます)汗をかいた時はさらに多く飲むようにしてください。血液中の水分量をある程度一定に保つために、一気飲みするのではなく、1回にコップ1杯程度を起床時や食前、食事中などこまめに飲むようにすると良いでしょう。また、睡眠中は水分補給ができないため、健康な人でも血液の濃度が上がり、脳梗塞を引き起こす場合がありますが、就寝2時間前に水分を摂取することで、胃に負担をかけることもありません。

■適度な運動と睡眠を心がける。

 食事は効果が高い脳卒中予防策ですが、ウォーキング、ジョギング、水泳などの有酸素運動を継続して行い、運動不足を解消することも心がけてください。そして過労と睡眠不足を避けることが予防につながります。

■お酒の飲みすぎは禁物。

 お酒には利尿作用があるため、水分の排泄を促し脱水症状になりやすくなります。

■空調で室内や湿度をコントロールする。

 暑い時期は睡眠中に大量の汗をかき、体内の水分が失われます。適度にクーラーを使い、室温や湿度を調整しましょう。

■禁煙

 タバコの煙に含まれるニコチンは血管の収縮、血圧や心拍数の上昇をもたらし、一酸化炭素は血液中の酸素の運搬を妨げます。その結果、血管が詰まりやすい状態になり、動脈硬化を促進し、脳血管障害の原因となります。

■食事療法

・毎日5種類以上の野菜(1日の摂取量目安:350g)、果物、魚を食べる。

・1日の塩分摂取量目安(成人男性 8g未満、女性 7g未満、高血圧患者 6g未満)

・低コレストロールの食事

■正しい入浴方法

・浴室と脱衣所を温めておく。

 暖かい部屋から気温の低い浴室へ行ったり、お風呂で温まった状態から寒い部屋へ行くことで血圧が変動します。血圧が急激に上昇、下降することで起こるヒートショックは特に冬場に発症しやすいですが、

 血栓が詰まったり、血管に異常が起きたりするため、入浴時は脳卒中のリスクが高まります。

・浴槽に入る前はかけ湯をする。

 かけ湯をする際は、手足など心臓から遠い部分から順番に5回程度かけてから入浴すると血圧の上昇幅が緩やかになり、心臓への負担も少なくなります。

・熱いお湯と長風呂を避けましょう。

 38度~40度のお湯に10分~15分程度浸かるのがおすすめです。

■定期的に健康診断を受診し、血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖値を自身で把握しておく。

まとめ

 脳梗塞の治療は時間との勝負です。脳梗塞の兆候を知っておき、何かおかしいと思ったら迷わず救急車を呼んでください。体を動かすことで症状が悪化する危険がありますので医療機関までは救急車を利用すると良いでしょう。

 脱水による脳梗塞は知識があれば予防することができます。健康だからと過信せず、熱中症とともに脳梗塞の危険性を理解し、こまめな水分補給を行いながら毎日を元気に過ごしていきましょう。